暁 〜小説投稿サイト〜
東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
万聖節前夜祭 1
[8/11]
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
[2]
次話
だ。
ふたりは木々がアーチ状になった緑の小路をゆっくりと散策する。
「すてきねぇ、森の中なのに、なんだか海の中を歩いているみたい……」
「ウクライナの愛のトンネルみたいだな」
京子の肩にとまったカラス――秋芳――がそう述べた。
「あ! そういえばそっくり。前に画像で見た愛のトンネルそのものだわ」
ウクライナの愛のトンネル。
ウクライナ西部のリウネ州、クレヴァン村にある鉄道の線路上にあり、緑の木々に囲まれたトンネル。その美しい景観からウクライナでも人気の観光スポットになっており、恋人と手をつないでこのトンネルを歩くと、おたがいの願いがかなうという、なんともロマンチックな言い伝えがある。
「知ってるか? ウクライナの結婚式では新婦の履いていた靴に酒杯を入れて、それを新郎が飲み干すという儀式があるらしい」
「へぇ、どんな意味があるの?」
「昔の兵隊たちの間で好きな女性の靴に酒を入れて飲むのが流行った時期があり、それがもとになっているとされる。ことさら宗教的、呪術的な意味はないが、強いて言うならフェティシズムが源にあるのかな。呪物崇拝と性的倒錯が同じ言葉で表されるというのはおもしろい」
「ふ〜ん、でもそれって不衛生よねぇ」
「俺は京子の履いた靴に注がれた酒なら、喜んで美味しく飲み干すことができるぞ」
「変態みたいなこと言わないでよ」
「俺にはあの坊ちゃんみたく美辞麗句で飾りつけた巧言令色を吐き出すことはできないんでね、こういう言い方でしか愛を表現できないのさ」
「あっ、まぁ〜だ彼のこと意識してるぅ」
「…………」
「そんなに心配しなくても、あなたのことはあたしがだれよりも一番好きよ」
京子はそう言って肩にいる秋芳の嘴の下を指の背中で優しくなでた。
「お……、これは、なんとも心地が良いな」
思わずゴロゴロゴロ……、と喉が鳴る。
「なぁに、その音? 今のあなたはカラスでしょ。猫さんじゃないんだから」
「猫にもなれるから、こういう機能もついてるんだよ。気持ちが良くてつい鳴っちまった」
「猫にも? なって、なって!」
「いいとも」
要望にお応えして黒猫の姿へと変わる。
「きゃー、本物みたい。とりあえず猫さんモフモフ、モフモフ……」
「うみゃみゃ、ナァーゴォ……」
それからウサギ、リス、カエル、狐、狸、川獺、タツノオトシゴ、ラッコ、ゴマフアザラシ、ファラベラなどなど……。京子からのリクエストに応じ、様々な変化をしたあと、最初のカラスの姿にもどった。
「――このように生物の姿だけでも大量のパターンが組み込まれている。穏形に関してはさっきの通りだ。たとえ素人が操作してもそれなりに穏形できるから、呪捜部にでも持って行ったら高値で売れるだろうな」
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
[2]
次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]
違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
しおりを解除
[7]
小説案内ページ
[0]
目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約
/
プライバシーポリシー
利用マニュアル
/
ヘルプ
/
ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ