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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
万聖節前夜祭 1
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だ余力があったようで、受け身をとってはね起き、ふところから呪符を取り出したのだが、すかさず白桜の手刀が一閃。腕はいやな音をたてて外側に九十度の角度で折れ曲がった。
 スクリームマスクはたまらずうめき声をあげて、うずくまる。黒楓の手がマスクにのびた。
 マスクの下にあったのは貧相な中年男の顔だった。汗をうかべ、苦痛にあえいでいる。

「おとなしくしなさい。あんたたちは何者なの? 目的はなに?」

 京子はごく普通に問いかけた。

「さぁ、なんだろうな?」

 この期におよんでハードボイルドふうに決めようと、そんな科白を言おうとした中年男だったが、口から出たのはちがう言葉だった。
 おのれの意志とは裏腹にペラペラと自分たちの氏素性と目的を自白し出す。
 自分たちは普段から呪術を使って犯罪行為をおこなっており、普段は個々に活動しているのだが、今回は龍鳳院宮寺光輝という大企業の要人を身代金目的に誘拐するという大仕事だったので徒党を組んだこと。集まったメンバーの中には、民間の拝み屋もいれば陰陽塾をドロップアウトした類の連中もいること。などなど……。
 中年男は驚愕に目を見開き、口を閉ざそうとするも、それもできない。見えない無数の糸に全身を絡み取られたように自由が利かなくっている。
 甲種言霊。
 帝式に分類される呪術で、相手の精神に呪を注入する、強制力のある言葉のことだ。
 甲種言霊には『侵入』の意思が帯びた強烈な呪力が練り込まれており、このような呪の込められた音声を聞かされた側は瞬間的に本能で『防御』しようとする。
 それと意識せずとも霊気が防壁を築こうと働くのだ。
 こうした反応は日常的に呪術をあつかう陰陽師には特に顕著で、甲種言霊を成功させるには、この防壁を突破する必要があった。
 甲種言霊をあつかえる術者はめったにいないが、逆にこれを防御することは呪術師ならばさしてむずかしくはない。
 甲種言霊を実践するには相手の防御を強引にねじ伏せることのできる強力な呪力を瞬間的に発揮し、なるべく相手の意表を突く。心の隙を狙う必要があるのだ。
 京子はいっさいのからめ手をもちいることなく、純然たる呪力で男の精神を屈服させた。

「……わかった。もういいわ、眠りなさい」

 中年男の全身から力が抜け落ち、昏倒した。
 どうやらもう仲間はいないようだ。これでようやく落ち着けるはずなのだが――。





 二度にわたる誘拐未遂。および対人呪術戦を目のあたりにしたことは、生来より繊細な性質である龍鳳院宮寺光輝には耐えられなかったようで、SPに守られて帰宅することとなった。

「呪術ってのは、恐ろしいものだね……」

 蒼白な顔をしてそうつぶやいた光輝もまた見鬼の才を持ち、陰陽二種の資格を持った陰陽師のはずなの
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