ロクでなしども、出会う
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あ店長、ものは相談なんだが、これ1セルトにまからんか?」
「いやぁ、悪いですけどうちは値引きはしない方針なんです」
「まあそう言うなって、もうすぐ店じまいの時間だろ。売れ残ったやつをまた明日並べるわけにはいかないんだし、それなら1セルトばかし安くして俺に売った方が得だとは思わないか?」
「それはそうだけど……」
「今日はもうお客がこないかもしれない。そしたら俺に売れば1セルトの損じゃなくて1セルトの得になるんだ」
「ものは考えようか……わかりました。1セルトでいいです」
「それじゃ、ほい。1セルトな」
「まいどあり〜」
グレンは入り口の前でくるりと振り返った。
「あー、考えたんだが、やっぱり大きいパンにするわ。いくらだっけ?」
「小さい方の倍の値段です……ん? ……お客さん、買い物が上手ですね」
「2セルトだな」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ! 1セルトならまけてもいいけど2セルトは!」
「さぁ、そこが商売だ。ここで2セルトまけてくれれば、毎日買いに来てやるぜ。たった2セルトのサービスでお得意がひとり増えるんだ。悪い話じゃないだろう?」
「まいったなー! お客さんには負けましたよ。2セルトでいいです」
「そうこなくちゃ。となると小さい方はいらなくなるから2セルトで引き取ってくれるな?」
「いいですよ」
「このパンが2セルトと、それにさっき渡した1セルトがあるからそれで3セルトだ。1セルトのお釣りだな」
「はい、確かに」
「邪魔したな」
「ほんとに毎日買いにきてくださいよー」
「ああ、ついでに知り合いにもこの店のこと宣伝しとくぜー」
1セルトと大きなパンを手に入れて帰路につく。
「ぐへへへへ、もうかったぜ」
ゲス顔でほくそえむグレン。みごとなロクでなしである。
そんなロクでなしに声をかけてくる人がいた。
「もし、そこのひと」
「ん?」
「これ、忘れ物ですよ」
学院のローブを手渡されたグレンはいぶかしげな目で相手を観察する。
質素だが清潔な服装に短身痩躯で東方の武闘僧のように剃り上げた頭。このあたりではちょっと見かけない髪型だが、危険なにおいは感じられない。比較的治安の良いフェジテの住人らしく、身に寸鉄も帯びず丸腰に見えた。
瞳や肌の色といい、本当に東方の武闘僧なのかもしれない。
「……あんた、だれ?」
「俺も昼間の騒動に巻き込まれたくちでしてね、その時にたまたまあなたがローブを担保に金を借りているのを見て、どさくさにまぎれて取り返しておきました。あ、俺はナーブレス家で働いている賀茂秋芳というものです」
「カモ・アキヨシ? 東方の人間だな。すると名字がカモで名前がアキヨシか」
「そうです。そのローブ、
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