ロクでなしども、出会う
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のだ。
「何か」とはなにか?
それは気。運気である。
通常の見鬼で視える類の気ではない。だが一流の陰陽師は見鬼にたよらずとも気を読む術に長ける。
秋芳は一時間ほど賭けに参加せず様子を見ていると大勝ちするような強運の持ち主はいないが、ずっと負け続きの男を発見した。
(今日こいつは憑いていない。だからわざとこいつの逆目に賭ける!)
「さぁ、黒出るか白出るか。どっちだどっち!」
「ええい、黒や!」
「なら俺は白で」
男が二沢の片方に賭けたらその逆に秋芳が賭ける。
男ははずれ、秋芳は当たる。
「く、くそーっ! こ、今度こそ……、白だ!」
「じゃあ黒」
男ははずれ、秋芳は当たる。
「や、やっぱり黒!」
「白だ」
男ははずれ、秋芳は当たる。
これの繰り返しだ。
逆に運気のある者がいたなら、その者の選択に乗っからせてもらい勝ちを拾う。
陰陽師流のギャンブル必勝法だ。
「おまえ、さっきからなに人の逆目にばかりはってやがるんだ!」
などと因縁をつけられる前に身を引くのがコツである。
あまり大勝ちして周囲の気を引くのも厳禁だ。自身が大勢の人の運気の渦中にあっては気の流れを読むのがむずかしくなる。
目立たず騒がず、地味に勝ち続けて確実に手元の金を増やしていく。
(そろそろ潮時かな)
「おい、こいつでいくらか貸してくれ」
黒髪黒眼で長身痩躯の青年が着ていたローブを胴元に差し出して金をせびっている。
「お客人、うちは質屋じゃねえんだ。金の貸し借りもやってないし、いつもニコニコ現金払いが信条なんだよ。金がないならおとなしく帰ってくれ」
「そう堅いこと言うなって、こいつは上物だぜ。なにせ魔術学院のローブだからな」
(なに?)
青年の言葉通り、ローブには学院の正式な講師職の証である梟の紋章が入っている。
「おいおい、いいのかい?」
「俺には重すぎなんだよ、こんなの。それよりも金だ金!」
学院のローブには防御魔法がかけられていて見た目よりも丈夫だ。さらに暑さ寒さを和らげる種の魔法も付与されており、これを身につけていれば一年中快適に過ごせる優れものだ。こんな場所で叩き売っていい代物ではないのだが、賭け事に熱を上げ、頭に血がのぼっている青年には目先の賭け事のことしか頭にないようだった。
(もったいない。あれ、どうにか手には入らないかな。いや、それよりもあの男、学院の関係者か? ならいくらか貸して、ここでよしみを通じてみようか)
そんなことを考えていると、見るからに堅気ではない風体の男たちが人ごみを乱暴にかき分けて出てきて秋芳を囲み、リーダー格とおぼしき巨漢が声をかける。
「ずいぶんと楽しそうじゃないか、
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