ロクでなしども、出会う
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やジュースを入れるなんて女子供の飲み物じゃないか」
どうもカクテル文化には馴染みがないようだ。
それなら直にお見せしようとジンにライムの搾り汁、シロッテの樹液を入れてギムレットもどきを作ってみせる。
秋芳が作るカクテルをゲテモノ料理を見るような目つきでながめる料理人達。
氷がないので入れられず、ミキシング・グラスやシェイカーもなしで作るのははじめてだが、できたものをスプーンでひとくちすすって味見すると、悪くはない。
「うん、美味い。メジャー・カップがないんで目分量たが、上手くできた。だまされたと思って飲んでみてくれ」
恐る恐る口にする料理人達。
「こ、これは!?」
「どうだ、悪くないだろう?」
「う」
「う?」
「うー、まー、いー、ぞぉぉぉぉっっっッッッ!」
「いや、そんなミスター味っ子みたいなリアクションするほどじゃ……」
「あんた、すげえな! こんな革命的な飲み方知らなかったぜ」
「そんな大げさな……ハッ! これはあれか? 異世界ものによくあるアレなのか? 肉を両面焼きしたり金貨を一〇枚まとめて数えたり、椅子と机に座って食事しただけで天才呼ばわりされる、アレなイベントか!? なんてこった、俺はカクテルでそれをやっちまったのか……」
嬉しいやら恥ずかしいやら、赤面して変な汗が浮いてくる。
(いやまあ、考えすぎか。酒になにかをくわえる飲み方なんて紀元前からあるんだし、たまたまここの人たちに酒を混ぜて飲む習慣がなくて『カクテル』という言葉を知らなかっただけにすぎない)
カクテルの歴史は古く、紀元前のエジプトではビールに蜂蜜や生姜を入れて飲んだり、ローマではワインに海水を入れて飲んでいた。唐の時代の中国でもワインに馬乳を加えた乳酸飲料が飲まれていたと伝えられている。
江戸時代の日本にも柳蔭という、焼酎と味醂のカクテルが存在する。
人は古くから酒になにかを入れて味わっていたのだ。
「なに突っ伏してるんだアキヨシ。なぁ、他にもなにか作ってくれよ」
「ああ……、それじゃあ次はモヒートでも作るか」
「美味い! もう一杯!」
あるもので作れるだけのカクテルを作っているうちに興が乗り、もはやカクテルなのかチャンポンなのかわからない代物をみんなでがぶ飲みして夜が更けていった。
魔術学院を擁するフェジテは他の都市にくらべて文化的な気風がある。
それでも荒っぽい連中はいるし、いかがわしい店が軒を連ねる場所もある。
どんな街にも表の顔と裏の顔。光と影があり、いま秋芳が歩いている下町の裏通りはフェジテの暗部。そんな場所だ。
「さあさあ、お立ちあい。御用とお急ぎでなかったら見ていっておくれ。手前ここに取り出だしましたるはトロールの脂
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