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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
京子のお見合い
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とや残忍なことをやられても自己満足して耐えるだなんて、そんなのたんなる変態だ」

 『ケンカは絶対にいけません』『話せばわかる』
 このように戦後の厭戦教育は暴力を絶対悪と教えているが、幼い頃からそのように言い聞かされて育った人間は不条理で突発的な暴力に対抗できないだろう。暴力への耐性がないからだ。
 向こうからケンカをしかけてくるやつ、話の通じないやつだって存在する。街中にも学校内にも家庭内にも、不条理で不快な暴力は世の中にあふれている。
 暴力を全否定する。そのような暴力の排除が新たな暴力を生むのだ。牙を抜かれた獣は他の獣に狩られて死ぬだけなのである。

「力愛不二という言葉がある」
「りきあいふに?」
「そう。力の無い愛は無力であり、愛のない力は暴力である。愛と力は別個に存在するのではなく一つに調和し、これを行動の規範とすべきである。という意味の言葉だ。他にも高名な空手家が『正義なき力は無能なり。力なき正義も無能なり』という言葉を残している。正義のない力は暴力にすぎない、かといって正義を守り抜く力がなければ意味がない。そういう意味だ」
「正義なき力は無能……、力なき正義も無能……」

 その言葉は新鮮な響きをもって桃矢の心に刻み込まれた。

「紀元前の中国に墨子という思想家がいる。この人は『自分を愛するように他人を愛せば争いは起きない』というキリストのような博愛主義を説いているんだが、『強い国が弱い国を侵略するのは悪で、弱い国がその侵略に抵抗するのは正義である』というような言葉も遺している。この国の部分を個人に置き換えてもじゅうぶん通用するだろう」

 なにやら話がずれてきたがこれは秋芳の癖のようなものだ。授業でもよく脱線してわき道にそれる。つい先日も伯家神道の話をしていたのにいつの間にかギザの大ピラミッドの話題になっていたものだ。

「墨子は非攻兼愛を唱える一方で平和を達成するために軍事研究して実践するという人でな、攻める利得が完全になくなれば戦争はなくなるだろう。と、彼と彼の弟子たちは各地の弱小国の城を守ってまわる傭兵みたいな集団になったとんでもない連中なんだ。 墨守という言葉がこんにちまで残っているのは、彼ら墨家の防衛術が非常に堅固なものだったからで――」

 それでも桃矢はあきれることなく黙って秋芳の言に耳をかたむけつつ、真面目に型をくり返し続けた。秋芳の語る内容に興味があったからだ。





 秋の日はつるべ落とし。
 夜というにはまだ早い時刻だが、日が落ちて暗くなった園内はハロウィン仕様のイルミネーションが煌めき、いっそう華やかさを増していた。

「でね、うちの会社ってば、こないだ上場しちゃったんだけど…、あっ、うちの会社ってのは龍鳳院宮寺グループじゃなくてぼく個人の会社のほうね。
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