ep4 軍人として……
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けています。また……』
だが、副官の次の言葉は基地の緊急ブザーによってかき消された。
けたたましく鳴るその音に、ハーキュリーは思わず頭上を見てしまう。
副官の声が聞こえてくる。
『ただいま確認しました。10時の方向より所属不明の機影あり。MS6機と軍用ホバー車両が8台。艦長、彼らは恐らく……』
敵の戦力と出現した方向から、副官が何を言おうとしているのか、ハーキュリーは察した。
「敵はパキスタンから敗走してくる我々を見ていたのか。それに最近、この一帯では小・中規模の中継基地が襲われている話を聞いた……」
そのとき、輸送機の外から基地オペレーターのアナウンスがぼんやりと聞こえてきた。
『当基地に向けて進行する所属不明の部隊を確認。MS部隊は出撃し、これを撃破せよ。繰り返す……』
ハーキュリーはそれを聞いて顔をしかめる。
「無茶だ。この基地に大した戦力はないはず。相手は恐らく盗賊だぞ」
太陽光発電の恩恵を受けず、自国の化石燃料に頼ってきた中東各国は貧窮しており、軍や公安職の機能はまともに働いていない。そのため、自らが生き延びるために所属する軍を離脱し、徒党を組んで敵基地を襲撃する盗賊が少数ほど存在している。
ハーキュリーはブリッジに向かわず、外が見えるデッキへ駆けた。窓の外では、基地から出撃するアンフ4機が敵の方角に向けて進んでいる。
「少佐。確かこの基地の裏手は砂漠が終わり、市街地があったはずだな」
『はい。民間人が住む地方の街になっています』
「こちらの部隊でMSは出せるか?このままでは基地は愚か、市街地もやられかねない」
副官の言葉が一瞬途切れる。それからすぐにレスポンスがあった。
『第2小隊は破損個所を換装しました。第1小隊の2機も各部の予備パーツを取りつけています。しかし、全機ともメカニックの最終チェックがされておらず、安全性は確保できません』
「なるほど……」
『機体のメンテナンスをしていない以上、戦闘中に予期せぬ事態が発生する可能性があります。最悪の場合、行動不能になることも……』
ハーキュリーは副官の現実的な懸念に言葉を詰まらせる。彼の分析は正しく、味方を危険に晒すのは明白だ。
ーー昔も似たようなことがあった。太陽光発電紛争時の軌道エレベーター防衛戦……。
ーーあのときは相方がいたが。
味方の安全を確保するか、軌道エレベーターとそれを建設する技術者たちを守るか。ハーキュリーは、味方の撤退を支持した。だが、相方はあのとき、軍人としての任務を下した。
ーー完璧な正解はないと思う。ただ、私は軍人として、市民を守る義務が優先するべきだと考える。
ハーキュリーは
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