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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
巫之御子 3
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「は、はい。せっかくですしちゃんと綺麗になってるか確かめないとですわ」
「このサイズのプールに水を張るとなると、相当な量になる。水道代もバカにはできないし、消毒用の塩素だって必要だ。そんな許可は取ってないから無理だ」
「ま、まぁそうですけど……」
「たしかに言われてみれば、水道代とか塩素のこととか、考えてなかったな」
「え〜、そこをなんとかならに? お願い先生」
「見苦しいわね緋組拾参番隊。先生の手をわずらわせたあげく、そんなわがまま言ってみっともない」
「あら、そう言う琥珀ちゃんだって水着用意しててのに」
「な!? 余計なことを言うんじゃない眞白っ」
「夏場は泳げなかったから、少し期待してたんだが残念だ」
「こら、白亜まで!」

 わーきゃーわーきゃー、実にかしましい。女っ気というものに縁のなかった秋芳にとって、この空気は新鮮で、わずらわしくもあり楽しげに感じた。

「まぁ、みんな最後まで聞け。実は俺もみんなと同じことを考えていた」
「「「え!?」」」
「実際の水を使うのは無理だから、呪術で出した水でプールを満たす。ついでに消毒も呪術でする。店側の出費はゼロ、関係者もいない。どうせ今日は営業してない俺らの貸し切り状態だし、黙っていればわからない」
「呪術の水って水行符を使うんですか?」
「でも私そんなに持ってない」
「巫女クラス一の呪術姫であるこの四王天琥珀を甘く見ないで。一枚で満たしてあげる」
「ふん、十体の簡易式もろくにあつかえないくせに大口を叩くな」
「なんですって!?」
「そもそも水行符……、呪術で出したお水は長くは持たないのでは?」
「ねぇねぇ、消毒用の呪術ってなに?」
「ええと、なんでしょう? 火行術でしょうか?」

 わーきゃーわーきゃー。やっぱりかしましい。こういうのを女子高のノリとでも言うのだろうか? このような喧騒も悪くない。そんなことを思いつつ、秋芳は自分の考えを実行に移すため、みんなをプールサイドに上げさせた。

「こうするんだ。――オン・シュリマリ・ママリマリ・シュシュリ・ソワカ!」

 この世の一切の汚れを焼き尽くし、有形なる物の不浄を浄化する烏枢沙摩明王(うすさまみょうおう)の真言を詠唱。
 清浄の力に満ちた聖なる炎が建物の中を洗い清め、プール内の目に見えない雑菌を滅却。さらに続いて――。

「ナウマク・サンマンダ・ボダナン・バルナヤ・ソワカ!」

 龍索印を結印し、十二天のひとつ水天の真言を詠唱すると、護法の呪力はH2Oの化学式で表される水素と酸素の化合物。すなわち水へと変わり、モン・サン=ミシェルの潮流のごとく激しくプールに流れこんでいっぱいに満たした。
 無から有を生み出す、恐るべき呪術の御業。
 正確には術者の精神力や呪力が代償になっているので
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