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ルヴァフォース・エトランゼ 魔術の国の異邦人
魔術の国の異邦人 3
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の世界でも再現できる異能はある程度は再現可能なのだろうか」

 ふたたび混乱しそうになる頭を落ち着かせ、書を漁る。
 公用語らしい英字もどきは読めるのだが、それ以外はさっぱりだった。

「……召喚された時点で俺はこの世界にある程度は受け入れられている。だからこそ基本的な読み書きは可能なの、か……?」
「エルフ語、ドワーフ語、ゴブリン語、マーマン語、ケンタウロス語、下位古代語にこれは……魔法語? ルーンだと! エッダ詩に記されているものと同様のものか。だが、数が多い。俺のいた世界のそれよりも種類が豊富じゃないか!」

 ルーン。
 アイスランドの神話であるエッダに書かれた物語によれば、知恵の神オーディンはさらなる知識を求めて自らを生贄にして儀式をおこなったという。
 おのれの身を槍で刺したうえにトネリコの枝で首をつったのだ。
 九日九晩、彼の意識は冥界へおもむき、そこで秘密の文字を得る。それこそが魔力を秘めた文字、ルーンだ。
 ルーンは梵字など、人間の作った文字とは異なり、神々の手による神秘文字なのだ。
 秋芳のいた世界、ヨーロッパで使われている文字はラテン語とキリル文字、ギリシア文字の三種であるが、古代では多数の民族がそれぞれ固有の文字を使っていた。
 しかしそれらの文字はほとんどラテン語に席巻されて消えてしまった。
 ルーン文字もそのひとつであり、このルーン文字は二四文字からなる。
 ヴァイキングが使用した第二のルーン文字は一六文字からなり、こちらは解読も容易におこなわれているが、こちらは魔術関連のものではなく、ルーンの魔力解明には至っていない。第一のルーンにこそ真の魔力が隠されているのだ。

「これが、この世界の呪術。いや魔法、魔術、呪文か……」
「実に興味深い。かつて土御門夜光は西洋魔術と東洋魔術の融合を考えていたというが、これは、これを習得すればセイズ魔術やガント魔術すらも……」

 呪術者としての純粋な好奇心がむくむくと鎌首をもたげる。

「せっかく呼び出されたんだ、こいつは習得して帰らなきゃ損だぜ」

 魔法、魔術、呪術――。
 これらは真の力のひとつであり、一般人が忌み嫌って敬遠したり、金持ちや政治家が楽しい娯楽としてあつかったりするものではない。
 世界を形作り、命の創造と破壊をおこなうことにはそれなりの敬意を払い、研究するべきだ。
なによりも好奇心。
 未知なるものに対する純粋な好奇心を妨げることはできない。

「――というわけで魔術を教えてくれ」
「なにが『というわけで』ですの!」
「いや、今の説明通りだよ」
「魔術の修行がお望みならわたくしの通うアルザーノ帝国魔術学院がもっともふさわしいと言えますわ」
「ああ、そのへそ出し制服の……」
「おへそはどうでもよくてよ!
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