魔術の国の異邦人 3
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縮された果実味。紅玉のような鮮やかな色とのど越しの良さが癖になりそうだ」
「おーっほっほっほっほ、そうでしょう。あなた、舌はたしかみたいね。なんでしたら別のものも差し上げてあげましてよ。おほほほほ」
「最初に名乗ったが俺の名前は賀茂秋芳。悪魔でも魔神でもない。ただ少々まじないの類が使える。いや、使えた。ここに、この世界に来るまでは」
「そのようみたいですわね、現にこうしてインプを召喚していますもの」
「ちがう」
「これはあなたのインプではなくて?」
「俺は別のものを呼び出そうとしたんだがな……」
秋芳が混乱していた時間はそう長くはなかった。
とりあえず現状を受け入れて、できることをしよう。
落ち着きを取り戻したあと、あらためて魔方陣からの脱出を試みたのだが、ほとんどの術は不発に終わり、まったく効果を現さなかった。
神道系、仏教系、道教系、修験道といった宗教系は全滅。木火土金水、いつつの元素を源にする五行術も同様。
「この魔方陣は俺にしか、内部にいる者にしか影響をおよばさない。外から破壊できないものか」
手持ちの簡易式を作成したところ、なんと発動できた。ただし、不完全な形で。
「なんだこいつは!?」
デフォルトで組み込まれている影法師の姿ではなく、悪魔じみた奇怪な外見の妖魔インプ。
なんどやり直しても変わらない。
しかも呪力の消耗がやたらと激しい。本来の一〇倍以上の消耗を感じる。
さらに式の操作、感覚の共有も困難だった。
自身の手足のように操り、見たもの聞いたものを知り得るはずが、かなり集中しないとそれがままならない。
まるで呪術を覚えたての頃に戻ったかのようだ。
それでも式が作成できたのはありがたい。さっそく魔方陣の破壊を試みたのだが、ごくごくわずかに込められている退魔の力に阻まれて破壊はできなかった。
もどかしさに焦燥しつつも外部との接点が持てたので水と食料を確保。ライフラインの維持ができたら次は情報収集。
この世界のことを少しでも多く知るために書棚から何冊か本を借りて読む。
「火素、水素、土素、気素、……これがこの世界を司る根源素。パラケルススの提唱した四大精霊とほぼおなじか。陰陽五行が世界の根本である俺の世界とは根本から違う。世界の法則が異なるから呪術が使えないのか」
「だが気を読むことはできる。見鬼の力はなぜ無くならない? 周囲に満ちる五気はなんだ? ……これは、錯覚か? 本来ならば気素であるところを、俺の脳が木気か金気のいずれかだと認識している」
「見鬼のように生来備わっている機能は損なわれないのか? ではなぜ式を作ることができたんだ、しかもこんな不完全な形で。互換性……、こ
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