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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
巫之御子 1
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「う〜ん、あなたのために歌うことが、こんなにもつらいことだなんて……」
「わけのわからん寝言を言ってないで起きろ!」
「ああっ! だめだよ秋芳……。ボクたちは姉弟なんだから……、そんなことしちゃいけないんだ」
「いったいどんなシチュエーションの夢なんだよ!?」
「歯磨きプレイなら、いいよ。それが兄弟姉妹の超えてはならない最後の一線……」
「うるせぇよ!」
「……て、ボクどうしちゃったの? たしか桃矢君にキスされて同調ナントカして――わ! 肩、どうしたのさ?」
 
 笑狸をゆさぶる秋芳の肩の部分。そこの布地は破れ、まわりに血がついていた。

「おまえが噛みついたんだよ。おぼえてないのか?」
「……うん」
「同調性共鳴症と言ったな。能力者を媒介にたがいの霊力を同調させる、て言うから、てっきり片方に二人分の意識と霊力が集中し、もう片方は意識を失うとでも思ったが、肉体が完全に融合するとは、予想外だったわ」
「す、すみません。まさかこんな結果になるだなんて、いつもはちがうんです」

 かたわらで呆然としていた桃矢があわてて声をあげる。

「なぬ?」
「今、秋芳さんが言ったとおり、普段はシンクロするだけなんです。相手の身体に僕の意識と霊力が移って、僕のほうは抜け殻になる、みたいな」
「そうか……。うん、やっぱり積極的に使って制御する方向で修練したほうがいい。自分の中にわけのわからない力があるのはいやだろう?」
「……はい」
「よし、じゃあ明日からよろしくな」
「あ、はい! こちらこそ、よろしくお願いします」





 道玄坂の路地裏。
 秋芳にのされた男たちがころがっている。 
 ぞぶりぞぶり、ごつんごつん、ぬちゃぬちゃ 、こつりこつり、ごぶりごぶり――。
 そこに水気をはらんだ異様な音が響いていた。
 男の一人が目をさます。一番最初に秋芳に殴りかかり、そけい部を強打されて気絶した茶髪男だ。
 起き上がろうとするが、できない。なにかが、なにかが身体の上におおいかぶさっている。
 よく飼い猫が寝ている人の上に乗ることがあるが、そのような感じでなにかが乗っているようだ。首から上だけを動かして、茶髪はそれを、自分に乗っているものを見た。
 最初、それは裸の子どものように見えた。小さかったからだ。だが子どもではない、子どもはこんな姿をしてはいない。
 骨と皮だけに痩せ細っているにもかかわらず、腹部だけが妊婦のようにふくらんでいた。猿のような顔をしている。
 茶髪が餓鬼草子や地獄草子を見たことがあったなら、そこに描かれている『餓鬼』というものに似ていると思ったことだろう。
 猿のような顔をしたそいつは、しきりになにかを口にしている。
 赤黒い、肉のようなものを口にはこび、ぞぶりぞぶりと咀嚼していた。

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