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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
巫之御子 1
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だ、そろそろ刀会が近いんだぞ。惰眠をむさぼるいとまがあるなら鍛錬するんだ。

 特に桃矢、おまえはチンピラ相手に怯むとはなにごとだ、修行がたりん! 今夜ちょっとつきあえ」

「ええ〜、そんなぁ。僕、さっき霊災を修祓してクタクタなんですよ」
「最終的に修祓したのは賀茂先生だろ。問答無用、来い!」
「あらあら、うふふ。お二人とも無理せずほどほどにしてくださいね」
「がんばってねぇ、おやすみ〜」

 刀会とは竹刀やなぎなたをもちいて試合をおこなう、武道実技を兼ねたクラス対抗の紅白戦で、巫女クラスの中でも派手で盛り上がる人気講義の一つだ。
 争いを好まない桃矢にとって苦手な講義になる。

「男子なんだろう、ぐずぐずするんじゃない。胸のエンジンに火をつけるんだ!」
「うう、今日はついてない。不幸だぁ……」




 
 紅葉は竹製の薙刀を八双に構え、そこから袈裟と逆袈裟の二連撃を絶えずくり出す。受けにまわった桃矢は防戦一方で、反撃するいとまもない。

「せいっ」

 パシーンッ!
 乾いた音を立てて桃矢の手から薙刀が落ちる。と同時に紅葉は薙刀を反転させ、石突きの部分で桃矢の鳩尾を突く。

「あうっ」

 もちろん手加減してあるとはいえ急所に攻撃を受けてはたまらない。思わずつっぷして、呼吸もままならない地獄の苦しみに耐える。いやな汗が流れ、地面に数滴の染みを作った。

「ハァ、ハァ、ハァハァハァハァハァ……、はぁ、はぁ、はっ!」

 ようやく息がととのい、おもてを上げると、巫女装束に身をつつんだポニーテールの少女が月光の下で薙刀を構えている。その姿は凛としていて実に絵になっていた。桃矢は疲労や痛みも忘れてその姿に一瞬見とれてしまった。

「なんだ桃矢? はぁはぁして、いやらしいぞ」
「い、いきが、息が上がってるんです! も、もう少し手加減してください」
「手加減したら桃矢の訓練にならないだろう? でも……、今日の桃矢。よくがんばったぞ」
「え?」
「いつもならとっくに音を上げてるはずなのに、打ちかかってきた。えらいぞ、よくがんばった」
「そ、そうですか?」
「ああ、そうだ。……なんか気持ちの変化でもあったのか?」
「気持ちの変化……」

 あった。
 今日、男たちに襲われた時。まるで映画やドラマのように颯爽とあらわれ、自分を救い、介抱してくれた人がいた。それだけにとどまらず、霊災までもこともなげに修祓したその姿は桃矢の脳裏に焼きついていた。
 かっこいい。自分もあんなふうになりたい、と――。
 普段ならへこたれてしまうところを、憧れの心が支えている、のかもしれない。

「む、その顔は心あたりがあるな」
「え、ええ……」
「そうか、わかったぞ!」
「え?」
「さっきの話
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