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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
巫之御子 1
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られたようじゃ」
「気をつけよ」
「うむ」
「あなや!」
「おまえもか」

 桃矢の霊力では一度に修祓はできない。だから同じ相手を狙って何度も九字を切っているのだが、いかんせん相手は多数でつねに動いている。移動する目標に命中させるほどの技量がないため、毎回ちがう餓鬼にあててしまう。
 しだいに霊力も尽き――。

「はぁはぁはぁはぁ――」

 ひたいに玉のような汗を浮かべ、息も荒くなる。

(さすがにもう限界だな。まぁ一般の塾生レベルならこんなものか)

 京子のような秀才や夏目のような天才、霊力だけならえらくタフな春虎、筆記も実技もそつなくこなす冬児。眼鏡の天馬。
 身近にそういう逸材がそろっていると、ついつい錯覚しがちになるが、霊災の修祓というのは見習いレベルでできるほど簡単なことではない。本職の祓魔官ですらフェーズ1の霊災に対し二、三人であたる。

「よし、それまで。よくやった、今の感覚を忘れるな」
「も、もうダメ。倒れそう……」
「すぐに終わらすから、倒れるなら寮にもどってからにしろ」

 相手は土気が強いので木気の術で一掃しようか、一体一体禁じようかと考えたが、ふと過去の出来事が脳裏をよぎる。

(そういうえば以前ヒダル神に憑かれたことがあったが、あの時の飢えと渇きは地獄の苦しみだった。こいつらも同じ苦しみにさいなまれているとしたら実に哀れだ。楽にしてやろう)

 弾指を打ちつつ呪文を唱える。

「ノウマクサラバ・タタギャタバロキテイ・オン・サンバラ・サンバラ・ウン――」

 施餓鬼会でもちいられる無量威徳自在光明加持飲食陀羅尼。
 掌に指で『米』の字を書き、それを食べる真似をすると、秋芳の身体から暖かい光があふれ、餓鬼たちをつつみこんだ。

「おお、なんと心地よい」
「腹がくちる」
「満腹じゃ」
「満足じゃ」

 その光りにふれた餓鬼たちはおだやかな笑みを浮かべて一体残らず霞のようにかき消えてしまった。

「今のはいったい……」
「捨身飼虎。お釈迦様は餓えた虎の親子に我が身をさし出したが、俺は餓鬼どもに自分の霊力を食べさせてやったんだ。満腹になって成仏したのさ」
「こういう修祓のしかたもあるんですね……」
「本来はきちんと供物を用意して儀式をとりおこなう。今みたいに自分の霊力を食わせるやり方は割に合わないからオススメはできないがな」

 脅威は去ったがずいぶんと時間がかかってしまった。桃矢をうながし女子寮へといそぐことにした。





「おそいぞ桃矢! どこで道草してたんだっ! すぐ帰ってくると思ってみんなご飯を食べないで待っていたんだぞ!」

 ぱっつん前髪の姫カット、長い黒髪を後ろで一つに結んでポニーテールにした気の強そうな女子が帰宅した
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