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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
巫之御子 1
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その腹だ。ガリガリに痩せているのに腹部だけは妊婦のように膨れている。
「が、餓鬼? フェーズ3の動的霊災が、こんなにたくさん!?」
桃矢が驚くのも無理はない。自然レベルでの回復を見込めない霊気の偏向、災害へと発展する直前の フェーズ1から始まり、これが進行し、強まった瘴気が周囲へ物理的な被害をあたえるフェーズ2と段階をへて、実体化した瘴気が鬼や鵺といった異形の存在となり周囲に瘴気をまき散らす移動型・動的な霊災。フェーズ3へとうつるのだ。
本来ならフェーズ3レベルの霊災など、そうそうあるものではない。
「……いや、ちがうな。見た目は動的霊災だが、実際の障気の強さや霊相から察するにフェーズ2。こいつらは群れ≠フ一部だ」
「群れ?」
「妖怪。動的霊災の中には自分の分身のような存在を大量に召喚できる能力を持ったものもいる。鳥山石燕の画図百鬼夜行に火を吹く子蜘蛛たちをあやつる
絡新婦
(
じょろうぐも
)
の姿が描かれているが、その子蜘蛛らみたいのが群れ≠セ。平安時代の阿闍梨、頼豪が鉄鼠と化して大量のネズミを放って延暦寺の経典を食い破ったり、藤原実方の入内雀が農作物を食い荒らしたという話を聞いたことはないか? このネズミやスズメも群れだな。実際の動物とは異なる、妖力や呪術で作られ、召喚された魔の眷属だ」
説明しつつ無造作に刀印を切る。牙を剥いてにじり寄ってきた餓鬼の一体はそれだけで消滅してしまった。
「群れの一体一体はこのとおり、たいして強くはない。よし、せっかくだ。ここで少し講義をおこなおう。課外授業だ。――御幣立つるここも高天の原なれば、集まりたまえや助けたまえや四方の神々――」
祝詞を唱え柏手を打つと、あたりが神聖な気につつまれた。秋芳が珍しく神道系の呪術を使ったのは、桃矢が巫女クラスの生徒ということを意識してのことかもしれない。
「うぬ、消えたぞ?」
「どこへ隠れた?」
「さがせさがせ――」
すぐ目の前にいるにもかかわらず、こちらの姿を見失ったかのように餓鬼の群れがきょろきょろとあたりを見まわし始める。
しかも不思議なことに近づいてきた餓鬼は接触直前でなぜか向きを変えてあらぬ方向へと向かって探りを入れている。
「これは……、隠形ですか?」
「いいや、こいつら自身を結界で捕らえたんだ。動いてもしゃべってもいいが念のため俺から離れるなよ。さて、桃矢。穢れとはなんだ?」
「え? あ、あの、よ、汚れてることですよね?」
「うん、まぁそれもそうだが、神道。呪術における穢れとは時間や空間、物体、行為などの万象が理想ではない。通常ではない状態や性質になっていることを指す。また穢れは『気枯れ』すなわち気が枯れた状態のことでもある。これは生命力や霊力の枯渇した状態で、そのような時に人は過ちを犯しやすい
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