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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
巫之御子 1
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よ、それ。M男にはたまらんだろうな」
「でも最近はわりと自由にさせてくれるようになったんですよ。僕がふしだらなことをする男子じゃないってわかったみたいで」
「それはそれで、複雑な気もするが……」

 秋芳はあらためて桃矢の顔をながめる。
 夕暮れ時の薄明かりに照らされた桃矢の容貌はどこからどう見ても少女にしか見えなかった。見た目がこうなると、性別は男でも気にならないものなのかも知れない。
 風が吹いた。
 秋らしい、涼しげな風だ。

「あー、涼しい。気持ちの良い風ですね」
「……桃矢、おまえ見鬼は不得意みたいだな」
「え? それ、どういう意味です?」
見鬼。霊気の流れや霊的存在を視認したり、感じ取る力。いわゆる霊感能力のこと。
「この風。わずかだが血の臭いと、瘴気がふくまれている」
「な!? それって――」
「問題だ。一日のうち霊災がもっとも多く発生する時間帯は?」
「え、ええと……。夕方から深夜にかけてです」
「正解。逢魔が時から丑三つ時にかけてが多く、日の出とともに減少する。そして今は逢魔が時、霊災多発時間の始まりだ」
「こ、この近くで霊災が起きてるんですか?」
「そうだ。修祓するぞ」
「そんな、急に言われても――」

 ぞわり。
 身の毛がよだつとはこのような感覚なのか、桃矢の全身が震えだす。
 こわい。
 恐ろしく、怖い。恐怖。陰の気を、闇の気を、邪なる気を感じ、体の震えが止まらない。周囲に満ちる瘴気を、見鬼によって察知したのだ。

「こわいか?」
「こ、こ、こっ、こわいですッ!」
「こわくない。俺がついてる」

 賀茂秋芳。この人は、強い。いざとなったら自分を守ってくれるだろう。そう頭で理解していても、こわいものはこわいのだ。
 ガタガタと脚が震え、腰がすくみ、萎えかけた腕で秋芳の服の裾をひっしとつかむ。

「こわくない。俺が、ここにいる」

 秋芳はその手をやさしく握り返し、ゆっくりと離した。

「わかりました。霊災を、修祓しましょう」
「よく言った」

 桃矢が覚悟を決めるのを待っていたかのタイミングで周りに黒い影が生じ、ぐるりと取り囲まれた

「見ぃつけた」
「見ぃつけた」

 影の中から声が響く。地獄の底から鳴り響くような、陰々滅々とした声が。

「桃の童じゃ」
「桃の童じゃ」
「憎き怨敵ぞ」
「憎き怨敵ぞ」
「陰陽師がおる」
「陰陽師がおるな」
「ひとりじゃ」
「陰陽師は一人じゃ」
「ともにとりて食らおう」
「おう、ともにとりて食らおう」

 影がゆっくりと迫ると、その中に潜むあやかしの姿があらわになる。
 土気色の肌をした小柄な体躯に枯れ枝のように痩せ細った四肢、ざんばら髪の下には猿のような顔がある。なにより異様なのは
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