魔術の国の異邦人 2
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を「名前で縛る」方法は使えないらしい。
「まったく、なんなんですの。きちんと呼び出したのに言うことを聞かないし、この本に書いてあることって信用できませんわ」
いぶかしげに手にした本のページをパラパラとめくって、内容を確認しだす。
表紙には英語でも日本語でもない――強いていえば英語に似ている、見なれぬ文字が書かれている。
『初心者必読! ゼロからはじめる召喚魔法』
秋芳の知識にはない文字にもかかわらず、そう書かれているのが読めた。
(なぜだ、なんであんな文字が読める? いや、そもそもさっきからこの娘は何語でしゃべっているんだ!?)
あまりにも自然に聞き取れていたので疑問に思うこともなかった。耳に入る言葉は聞きなれない旋律の異国の言語として耳に入るのだが、頭には日本語として伝わってくるのだ。
(あれ? なんか前にもこんな珍妙な二か国語放送を経験したような……)
「カエルの目玉、コウモリの羽、君影草の花、人の魂だとごまかすための雌鳥十羽、etc、etc ……。必要な触媒はきちんと用意してありますのに、おかしいですわね」
(あのときは……、あのときって、いつだ? いや、というかそもそも俺はだれだ? 『賀茂秋芳』という俺はだれなんだ!?)
呪禁の血筋――葛城山――賀茂家の養子――京都――数多の裏働き――百鬼夜行――陰陽塾――。
やはり、記憶が混濁している。
プロフィール欄に書かれているような、過去のことを断片的に思い出すことはできるが直近のこととなると思い出せない。
鮮明だったにもかかわらず、見終わった後にボヤけてしまう夢の内容のように。
「まったくだれですの、この本の著者は。出版元に問い合わせをして謝罪を要求させましょうかしら」
おたがいに自分の考えに没頭していると、息急き切ってミーアが駆けつけてきた。
「す、す、すみません! すみません、お嬢様〜。材料、まちがえちゃいました〜」
「なんですって!?」
「お塩だと思ったらお砂糖。バタタ芋じゃなくてタロ芋でした〜」
「んまぁ! 触媒に誤りがあればまともに起動できなくてよ」
「塩はともかく芋って、肉じゃがでも作るつもりか。どんな悪魔召喚だよ」
「種から育たず、芽に毒のある芋類は大昔に聖エリサレス教会教皇庁が異端認定したことがありますし、悪魔召喚の儀式に使われても違和感ありませんわ」
「そうか〜? て、ちょっと待て。ここはヨーロッパか?」
「ここは栄えあるアルザーノ帝国はフェジテにあるわたくしの家。ヨーロッパなんて国も街も、存じませんことよ」
「……いまは、西暦何年だ?」
「聖歴一八五X年ですわ」
西暦。AD(アンノドミニ)ではなく聖暦。
「……新聞は、あるか?」
「ありますけど、それ
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