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ルヴァフォース・エトランゼ 魔術の国の異邦人
魔術の国の異邦人 2
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 魔方陣はごく普通の白墨。チョークによって描かれている。水天の真言で水流を発射して洗い流すつもりだったが、これまた不発に終わった。

「禁術則不能現、疾く!」

 術を禁ずれば、すなわち現れることあたわず。

 力業で強引に解呪しようとする。だが自家薬籠中の持禁の術すら発動しない。

「どういうことだ……」

 術を封じられたわけではないのに術が使えない。今まで例のなかった出来事に呆然とする。

「なにやら悪魔の邪法をこころみているようですが、このウェンディ=ナーブレスの魔方陣は完璧、完全。無駄な抵抗はあきらめたらいかがかしら」
「ウェンディ=ナーブレスというのが君の名前か?」
「そうですわ――ハッ!!」

 真の名を知ることで対象を束縛する。
 悪魔や魔術に長けた存在に安易に名前を教えてはいけない。
 そのような言い伝えがある。
 手持ちの召喚呪文書にもそんな記述があったはずだ。
 そのことに名乗ってから気づいたウェンディが思わず口を押さえる。

「ウェンディ=ナーブレス。俺をこの魔方陣の中から出せ」

 甲種言霊。
 呪力が乗せられた言葉によって相手の精神に干渉し、言葉の内容を強制させる呪。
 幻術系とならんで秋芳の不得意とする呪だが、相手の霊力ははるかに格下。さらに名前を知っていることによる有利な条件によってやすやすと術中におちいるはずだったのだが――。

「こ、答えはNOですわ!」

 これまた不発に終わった。

「なんてこった、いったいなにがどうなっているんだか……」

「次はわたくしが質問する番ですわ。悪魔よ、あなたの真の名を教えなさい!」

 どうやら相手に名が知られても問題はないようだ。では逆の場合はどうか? 真の名を知って召喚モンスターを支配する。いかにもサモナーらしいではないか。
 ウェンディは期待を込めて訊ねる。

「俺の名は……」

 真の名など、大層なものは持ち合わせていない。忌み名という考えがあるが、いくつもの名を名乗ったところで『その名前は自分を指している』と認識した時点ですべての名はおなじものとなる。
 これがこんにちの呪術界の定説だ。
 素直に名乗ろうとしたが、言葉につまる。
 思い出せないのだ、自分の名を。
 寝起きの、頭に靄がかかったような茫洋とした感覚。


(俺の名は……名前は……)

「……賀茂秋芳」

 たっぷり十秒ほどの時間をかけてなんとか自分の名前を思い出すことができた。

「はぁぁ!? カモ・アキヨシだなんておかしな名前ですこと。……カモ・アキヨシよ、このわたくしウェンディ=ナーブレスを絶対に傷つけないと誓いなさい!」
「いや、それは約束できないな」
「なんですって!」

 どうやら悪魔
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