魔術の国の異邦人 2
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気がつけば地下室のような場所に立っていた。
床には魔方陣が描かれ、自分はその中心にいる。まるで何者かの呪法によって召喚でもされたかのような状況。事実魔方陣には召喚用の術式が込められている。
(結界か……)
召喚だけではない。魔方陣内にいる任意の存在を外に出さないよう結界も張られていた。
(だが、雑だな)
目の前で悪魔だなんだと、意味不明なことを騒ぎ立てるヘソ丸出しのツインテール少女を無視して周囲を注視する。
結界による拘束はあくまで地上部分のみ。しかも自分ひとりにしか作用していない。これならば土行術で床面に潜ったり、穴を開けて外へ出られる。
「なぁ、ここから出してくれないか」
「ならその前にわたくしを傷つけないと誓いなさい!」
「…………」
少女の言葉に呪術的拘束力は感じられない。甲種言霊でこちらの行動を制御される可能性はないようだが、即答ははばかられた。
呪術者にとって口約束もまた呪なのだ。めったなことは口にできない。
一見無害な少女のように見えるが、とんでもない極悪人ということもありえる。その場合はそれなりの対応をすることになるのだが、ひとたび口にした言葉をたがえるのは後味が悪い。
「そっちにそのつもりがないのなら、勝手に出るさ」
「な、なんですって!?」
石床に手をついて呪を唱える。
「命土行遁、移?。疾く!」
土行に命じて遁ず、移れ。いわゆる土遁の術だ。結界の下を潜って外に出るつもりだったのだが、術は効果を発揮しなかった。
「なに!?」
術をしくじったわけではない。たしかに成功した。それにもかかわらず発動しないのだ。
「命土行遁、移?。疾く! 疾く! 疾く!」
おなじ術を二度三度と試みるも、結果は変わらず。
「ふふん、なにやらあやしげな術を使おうとしているようですけど、無駄ですわよ。わたくしの作った魔方陣にわずかな瑕疵もございませんわ!」
得意気に胸を反らすウェンディ。だがそんなことはない。封印系の術式など組み込まれていないと、秋芳の見鬼は視ていた。
「ならば――」
その場で奇妙な足踏みをする。帝国式陰陽道に伝わる禹歩。霊脈を通って別の場所に瞬間移動する呪術だ。
むき出しの土がある場所と異なり、整地された石畳の上からでは長距離移動は不可能だが、この結界の外に出る、ほんの数メートル程度の移動なら造作もない。
「…………」
だが禹歩もまた効果を発揮しなかった。たしかに発動した手応えはあるにもかかわらず――。
「ちょっと、なに奇妙な躍りなんてしていますの。ダンスをなさりなさいなんて命じてなんていませんわよ」
「ええい! タニヤタ・ウダカダイバナ・エンケイエンケイ・ソワカ!」
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