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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
巫女学科
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足での連続した蹴り、空手でいう二枚蹴りが決まった。蹴りを受けた手からはナイフが、顔からは白い石のような物があらぬ方向へ飛んでく。
 白い石のような物、歯だ。あごの骨を砕かれ、数本の歯が吹き飛んだのだ。その衝撃に脳震盪を起こしてその場にくずれ落ちる。痛みを感じる前に意識を失ったのは幸運だったのかも知れない。
これでもう、まともに動ける狼藉者はいなくなった。

「ねぇ、君。だいじょうぶ? ケガはない?」

 予想だにしない展開に呆然としている桃矢に笑狸がやさしく声をかけた。

「とりあえず逃げよう。普通にゆっくり素早く、ここから離れるんだ」

 街でのケンカは五秒で終わらせ五秒で逃げ切るのが理想だ。そうしないと警察に見つかり、身にふりかかる火の粉をはらっただけなのに捕まりかねない。
 警察とヤクザに関わるのはごめんである。秋芳たちはいそいでその場を後にした。





 陰陽塾男子寮。秋芳の部屋。

「いや〜、災難だったな。あとできちんと通報しといたほうがいいぞ。ただし俺のことは内緒でな」
「……ありがとうございます」

 桃矢は差し出されたお茶をひと口すする。甘い。だが砂糖やシロップの甘味ともちがう、不思議な味だった。

「それ、羅漢花茶だよ。日本じゃあまんまり見かけないよね、美味しいのに」
「うむ、中国南部に住むミャオ族の人たちはそれを不老長寿の健康茶として重宝しているんだ。よく味わって飲むように」
「は、はい。すごく美味しいです」

 ほっと一息ついた、その時。
 ポロリと涙が落ちた。

「え?」

 とめどなく涙があふれてくる。止まらない。

「ひっく、な、なんで……。う、うぇぇっ、なんで? なんで泣いちゃうの?」
「緊張の糸が切れたんだろう」
「う、ぐすっ。こ、こんなの情けな、ひっく、僕、男なのにっ……」
「なぁに、男でも女でも泣きたい時は泣けばいいのさ。俺だって『男たちの挽歌』を観たり『Kanon』をプレイした時は、ぐっとなって泣いちゃうからな」
「うぐぅ、それジャンルちがいすぎですよ。ぐすっ、スンスン……」

 しばらくの間、桃矢のおえつが部屋の中に響く。
 ようやく落ち着きを取り戻した桃矢は部屋の中をぐるりと見わたす。けして広くない部屋中に遮光器土偶だのカレー鍋だのファラオの胸像だのが置かれている混沌とした様相。それでいてどこか整然としている。
 この部屋の主は、自分を助けたこの人はいったいどのような人物なのだろう?

「あの、助けてくれてありがとうございます。僕は巫女クラスの梅桃桃矢といいます。……性別は、男です」
「ああ、男の帯びる陽の気をまとっているのが見える。俺の名は賀茂秋芳で、こっちは笑狸だ。さっきは偉かったぞ、あそこまで追いつめられても呪術を行
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