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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
巫女学科
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、自分の好奇心からそのような占いをしてはいけないというものだ。
 恋する若者の姿を見ていると、こちらまで気が若くなる。年がいもなく、ついつい少女の心に戻って恋占いをしようとした自分の未熟さに恥じる美代だった。





 渋谷区道玄坂――夕刻。
 異能がもてはやされるのはつねにアンリアルな世界だけ、現実ではそうはいかない。人ならざる〈力〉が、能力が他人に知られたらどうなるか……。だから梅桃桃矢は自然と心を殺し、ふたをしていた。
 そのふたをはずし、殺していた心に息を吹き返さしてくれたのは巫女クラスのみんな。ひいては陰陽塾と、そこに紹介してくれた講師の大友先生だ。
 だがそれでも、いや、感情を取り戻したからこそ生じる悩みがあった。
 ショーウィンドウに映った自分の姿が目に入ってしまい、思わずため息がもれる。
 千早、襦袢、白衣が一つになったような上着と、緋袴のようなキュロットスカート。神道の巫女装束を模してデザインされた、陰陽塾巫女クラスの制服。それに身をつつんだ華奢で小柄な体躯。やわらかく艶のある黒髪に白い肌、濃いめの桜色をした唇、丸みをおびた優しげな顔立ち。
どこからどう見ても少女にしか見えない。それも美少女と言っていいレベルの。
 だが梅桃桃矢はれっきとした男性だ。生まれついての体質か、いくら食べていくら運動しても太らないかわりに、筋肉もつかない身体だった。
 この脆弱な体型がいやになり、一時期はボクシングを習ったこともあったが成果は上がらず、肉体にも目覚ましい変化はなく、それどころか新たな禍根を残すことになってしまった。
 その禍根とは――。

「あれ〜、桃子ちゃんじゃない」

 B系やストリート系のファッションをした数人の少年に取り囲まれる。

「こんな場所でオレらに合うなんてラッキーだねぇ」

 ニヤニヤ笑いながら髪を茶に染めた少年が近づき、軽めのボディブローを放つ。他の少年たちの体に隠れ、周囲には殴ったところを見られぬように計算して。

「うぐっ」
「これがボクサーの挨拶だよ挨拶、桃子ちゃんも経験者ならわかるよね?」

 ボクシングにこんな挨拶あるものか……、痛みと悔しさで目に涙がにじむ。
 彼らは桃矢が以前に通っていたボクシングジムの練習生たちだ。なにかというと桃矢の女の子のような容姿を嘲笑い『桃子』などと呼び、スパーリングと称していじめを繰り返してきた連中。
 無意識のうちに周りに助けを求めるよう、逃げようと身じろぎした桃矢の肩を、金髪の少年が力いっぱいにつかみ、押さえた。

「逃げるなよ、桃子」

 痛みに顔を歪ませ、おびえる小動物のように目を潤ませて金髪を見上げる。
 獣だ。
 そこには人の皮をかぶった獣がいた。自分たちより力が弱い、脆弱な者を狙い、集団で虐げる少年
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