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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
まぼろしの城 2
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色、金色――。様々な色をした錦鯉と変じて池の中を泳ぐ。

「こ、これって幻術!? 視てもわからないわ」
「この感じは式神だな。それより気をつけろ、こうして注意をそらしてなんかしかけてくるパターンかもしれない」
「ふん、もうあんな手になんてかからないんだから!」
 
 一〇秒、三〇秒、一分、二分、三分。なにも起こらない。

「なによ、たんなる演出?」
「みたいだな。先に行こう」
「ちょっと、この鯉って式神なんでしょ? このままにしておくのってあぶなくない?」
「んー、だからといってなにもしてこない池の鯉に手を出すのも無粋だしなぁ」
「せめて、動きを封じておきましょうよ」

 京子はなにか思いついたのか、水行符を手に池に近づく。

「水気は清冽にして――」

『テケリ・リ、テケリ・リ』

 京子がなにかしらの術を行使しようとした時、奇妙な音を発し池の水が盛り上がり押し寄せた。
 否、水ではない。半透明をした寒天のような生物。それが京子の体にまとわりついた。

「ちょっと、また変なのじゃない!?」

『テケリ・リ、テケリ・リ』

 それは奇妙な鳴き声を出して京子の身体をおおった。生暖かくぬめりをおびた粘性の感触に不快感をおぼえたが、それがゆるやかに蠕動を始め出すと、その感想は吹き飛んだ。
 気持ち良い。

「ひゃンっ! アッ、ぃやだ、ん、……ンン!?」

 胸を揉みしだかれ、腰をまさぐられ、尻を撫でられ、首筋と脚をさすられる。全身をくまなくマッサージされているかのような甘く優しい刺激に、思わず悩ましげな声が出てしまう。

(やだ! なんて声出してるのよ、あたし!)

 顔から火が出るくらい赤面し、目に涙を浮かべ、羞恥にさいなまれて身悶えする京子の耳に、どこか怒気をおびた口訣が響く。

「禁妖則不能在、疾くッ!」

 あやかしを禁ずれば、すなわち在ることあたわず。
 京子にまとわりついていた妖物はたちまち消し飛んだ。その存在自体を禁じられ、消滅してしまったのだ。

「う〜〜〜〜ッ」

 その場にうずくまった京子は怒りと恥ずかしさで顔も上げられない。

「以土行為石槍、貫。疾く!」

 土行を以て石の槍と為す、貫け。
 秋芳が術を行使すると無数の石筍が池の中から盛り上がる。そのうち何本かには不定形の粘性妖物。 先ほど京子にまとわりついたあやかしと同じ種のものが串刺しにされているのが見てとれた。先ほど池の鯉の手を出すのは無粋と言った秋芳だが、その行為には容赦がなかった。

(あれ? 秋芳君、怒ってる?)

 京子が見上げれば、確かに秋芳の表情には怒色が浮かんでいる。

「……あの無数の式神は池に潜む妖怪の気配をごまかすために撒いたんだろうな。しかし女好きの秀吉
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