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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
まぼろしの城 1
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明書を読んだだけで難易度に挫折し、置きっ放しだったのだが、その話を聞いた祖父が天馬の模型好きを思い出して譲り受けたという。
 祖父から模型を渡された時は正直、複雑だった。祖父の友人が匙を投げただけあって、かなり手間ひまのかかる作りだったからだ。
 しかし孫のためにゆずってもらい、わざわざ重くかさ張る物を持ってきてくれた祖父の気持ちを思うと、無下にもできない。
 さらにこの模型。その完成度とともに値段の高さでも有名なメーカーの作品で、それを前にして純粋に『作りたい』という欲求もあった。
 空いた時間。勉強の合間などに気分転換を兼ねてコツコツと作業し、やっと落成させたのだ。

「う〜ん、改めて見てみると我ながら会心の出来栄えだよね。やっぱりウェザリングもやって良かった。お城の模型は始めてだったけど、このほうがリアルっていうか雰囲気が出るよね。あ、でも石垣はやっぱり難しいな。もうちょっと……、いやいや、これ以上は汚くなるだけだ。瓦屋根とのバランスを考えると、これくらいにしとくのが正解だよね。うんうん……」

 真剣な表情でみずからの作品を再確認しながら独りごちる。
 城の模型は天守閣だけでなく本丸御殿や櫓、内堀など、城全体が再現されていて、もともとはなかった庭の砂や木々までつけ足されているため、ちょっとしたジオラマに見える。
 建築物は内部まで作りこまれ、屋根や壁の一部は取り外しができ、中が見られるようになっているのだが、そうした境目は見てわからないように念入りに塗装してある。
 これも天馬の成せる技だ。

「こうなると人間も配置してみたいなぁ、でもこのスケールの人形なんてあったっけ? どうせなら侍がいいし、そうなると馬も欲しい……。あ、石垣の目立たない所に忍者を置くのもいいかもしれない! よし、ちょっと探してみよう」

 物作りというのは楽しい。
 おそらく死んだ父も同じ楽しさを知っていたのだろう。もし父が生きていたら、自分の作った模型を見てなんと言うだろうか? それに父の模型作りを苦笑しながら眺めていた母は――。
 見てもらいたかったなぁ。
 誰かに見てもらいたいなぁ。
 見て欲しい。

「あ、そうだ」

 いつだったか、天馬は自分が模型を作っていると友人たちに話したことがあった。春虎など、完成したらぜひ見せて欲しいと言っていた。
 そのことを思い出したのだ。
 さっそく携帯電話のカメラで完成した城を撮り、メールに添付して送ろうとする。どうせなら春虎以外にも見せたいし知らせたい。冬児や夏目。京子や秋芳にも。
 文章を考え、書いて、唐突なメールを謝った上で、一斉送信。

「ふぅ……」

 天馬は満足げに息をついた。





 街ゆく人々が同じ方向に視線をむける。
 亜麻色の髪をハーフアッ
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