暁 〜小説投稿サイト〜
真田十勇士
巻ノ百十一 二条城の会食その七

[8]前話 [2]次話
「大坂そして摂津、河内、和泉の民は」
「無事にです」
「治めて頂きますか」
「その様に致します」
 家康は再び約をした、それも確かな声で。
「無論右大臣殿のことも」
「それがしのことは別に、ただ」
「民はですな」
「安らぐのなら」
「それでは以後豊臣家は別格の家として」
 その立場でというのだ。
「それがし対しましょう」
「そうして頂けますか」
「千は元気ですな」
 家康は秀頼の正室であり彼の孫である彼女のことも聞いた。
「左様ですな」
「はい」
 そうだとだ、秀頼も答えた。
「ご安心下さい」
「それは何より。では終生」
「仲睦まじくですな」
「過ごされよ、それがこの年寄りの願いです」
「そうですか、しかし」
「しかし?」
「大御所様はそれがしの祖父、しかも位も上」
 源氏長者の立場になったというのだ。
「それでは口調も」
「ははは、どうしてもですな」
「どうしてもとは」
「右大臣殿がご幼少の頃に対していた時の名残で」
「それで、ですか」
「この喋り方なのです」
 そうだというのだ。
「右大臣殿には」
「そうなのですか」
「お気になりますか」
「どうも、祖父殿にそう言われると」
「それがしを祖父と」
「いつも千から聞いておりまする」
 秀頼は微笑み家康に応えた。
「それがしのことをどう思っておられるか」
「そうでしたか」
「そして天下のことも」
 それのこともというのだ。
「どうお考えか」
「全てですか」
「千から聞いておりました」
「それは何より」
 家康も満足出来ることだった。
「それでは」
「そのお話のままに」
「はい、安らかにさせてもらいます」
 秀頼も豊臣家もというのだ。
「よいお返事をお待ちしておりますぞ」
「今すぐではなく」
「今すぐは無理であられましょう」
 それはというのだ。
「残念ですが」
「それは」
「ははは、言わずにおきましょう」
 あえて茶々のことは話さなかった。
「しかしそれでも」
「大坂で話がまとまれば」
「その時は」 
 まさにというのだ。
「よき様に」
「それでは」
 二人で酒も飲みつつ話した、そして。
 その酒についてだ、家康はこうも言った。
「やはり酒は上方ですな」
「東の酒は」
「これがどうも」 
 酒については苦笑いで話した。
「よくありませぬ」
「そういえば土が悪いとか」
「ご存知ですか」
「聞いておりまする」
 その様にというのだ。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ