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歌集「春雪花」
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 知らぬ間に

  虫の鳴く音も

    絶へ果てゝ

 軒下につもる

   枯れ葉踏みしむ



 寒くなったと思っていたら、秋虫の声が全く聞こえなくなっていたことに気付いた…。

 これでもう、本格的に冬になるのだろう…。

 今年は一度も彼には会えなかった…。
 いや…もう会うことはないのだな…。

 四季折々に移ろう空…人の心も解らぬもの…。


 溜め息をつき…落ち葉の積もる軒下へと降り、泣きそうな空を見上げた…。



 いつとてか

  君と過ごせし

   月日さへ

 夜へと消しなむ

   いたむ木枯らし



 いつだったか…そう思い返す彼と過ごした思い出…。

 真夜中に一人寂しく記憶の淵を彷徨っていると…外では草木を枯らさんと木枯らしが吹く…。


 まるで…この思い出さえも、真っ暗な夜の闇に消してやるとでも言うように…。




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