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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
奇門遁甲(乙種)
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たら、どうしようもないと思うんだけど…」
「今回は俺もみなさんも基本、甲種呪術を使ってはいけません。それがルールです。隠形術についてはみなさんの見鬼をあざむく程度におさえます。逆にみなさんは全力で穏形してもらっても結構です。とにかく俺は逃げ回りますので捕まえに来てください。と言っても――」

 秋芳はかたわらに置いてあるダンボール箱の中からなにかを取り出す。呪符だ。

「なんの訓練も受けていない人に、人を一人いきなり捕まえろと言ってもむずかしいでしょう。なので捕縛用の呪符を用意したので、これを使って俺をとっ捕まえてください。スワローウィップを模した簡易式になってますが、本物ほどの追尾性はありませんので、よく狙って打つように」
「秋芳センセー」
「はい、冬児くん」
「秋芳センセイを捕まえるのに、甲種以外の呪術は使用してもいいんですか? たとえばこいつとか」

 そう言って拳をかざして見せる阿刀冬児。

「はい。甲種呪術さえ使用しなければ、なんでもありありです」
「よっしゃ、やってやるか」
「今日の授業の要旨は『いにしえの遁甲術を知る』と『術を制限された状態でいかに動くか』の二点です。あ、それと首尾よく俺を捕虜にできた人には昼飯を一か月間おごるくらいの特典はつきますので、がんばってください」

「一か月タダ飯か!」
「おもしろそうだな」
「なんか鬼ごっこみたいね」

「制限時間は正午までとします。他に質問がなければもう始めますよ? …………。ないみたいですね。それでは……、忍ッ!」
なにかを地面に放ると、そこから白い煙がもうもうと立ち昇る。
「うわっ」
「けむっ」
「え、煙幕!?」 

 煙はタコの墨のように広がり、野外で風通しが良いにもかかわらず、イカの墨のように長時間持続した。煙がなくなった後、そこに秋芳の姿はなかった。
 余談だが、イカの吐く墨にはムコ多糖類という粘液物質がふくまれているため、吐き出した墨は拡散せずに不定形のかたまりになる。イカはこの墨を自分のダミーとして吐き出し、敵の目がそちらに向かっているすきに逃げる。変わり身の術だ。
 この粘液物質には制ガンや抗菌、メラニン色素の他、うまみ成分のアミノ酸も含まれているので美味しい。
 タコの墨にはそれら粘液物質が少なくサラサラとしているので、煙幕のように散らばり敵の目をくらます働きがある。めくらましの術だ。
 イカ墨パスタはあってもタコ墨パスタがないのはこのためである。

「ハハッ! こらおもろい。煙玉やないの、まるで忍者やね。賀茂は修験道と縁の深い一族や。そんでもって修験道は忍者と密接に関係しとる。みんな今日は秋芳クン相手にあんじょう気張るんやで〜」
かくして大自然にかこまれてのかくれんぼが始まった。





「え?! 
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