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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
闇寺
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、やっぱ猩々やうわばみの生成りってザルだね〜。いくらでも入るみたい」
「酔ってるな」
「酔ってるよ〜。でもまだ飲めるよ〜」

 笑狸は柔らかなにこ毛を秋芳の胸にコシコシとなすりつけつつ、秋芳が手にした杯に口をつけ中身を飲む。

「行儀が悪いぞ」
「もうこの場所自体が行儀悪いよ」
「そうだな」
「…………」
「…………」
「ねぇ、秋芳」
「うん?」
「さびしいね」
「さびしいな」

 宴や祭りの終わりというのは、どうしてこうさびしいのか? 笑狸はそう言っている。

「こういうのを『もののあはれ』と言うのだろうなぁ」
「う〜ん、そうかな? うん、そうかもね」
しばらくそのようなやり取りをしていた秋芳だが、急に立ち上がり外へと出ようとする。
「どこに行くの?」
「酔いさましにそこらを歩いてくる」
「ふ〜ん、行ってらっしゃい」





 山は季節の訪れが麓よりずっと早い。
 鮮やかな紅葉を目にして少女はため息をついた。
 その美しさに感じ入ったのか、あるいは秋特有の感傷的な気分になったのか――。

「お腹すいたなぁ」

 ちがった。

「宴会。一晩中やってた。…美味しい食べ物がいっぱい出たんだろうなぁ」

 サイズの合ってない大きめの眼鏡におさげ髪。まだ中学に上がるか上がらないかくらいの年齢の少女はそうひとりごちる。
 少女の名は秋乃。星宿寺に身を置く者の中でもっとも年若く、もっとも弱い立場にいる存在だ。
 だれしも自由に飲み食いしてもよい宴会が開かれたと聞いてはいたが、とてもではないが顔を出せる勇気はない。意地の悪い先輩連中になにを言われることやら……。

「いいもん、お芋食べるもん」

 庫裏と呼ばれる寺の台所からこっそりと竈の熾火とサツマイモを持ち出し、境内の奥にある朽ちたお堂のそばに行く。
 地面に浅く穴を掘り、そこに芋を置く。その上に落ち葉をかけて、熾火と灰をかぶせ、火をつけようと――。

「あ、ない!」

 マッチやライター。点火する物を用意するのを忘れていたことに気づく。

「あ〜ん、バカバカ。わたしのバカ。んも〜」

 どうしよう?
 しかたがない。取りに戻ろうとした秋乃だったが、その時。

「火が必要か?」
「ひにゃっ!?」

 急に声をかけられて仰天し、思わず変な声が出てしまった。その瞬間、秋乃の髪の輪郭がぶれ、頭のすぐ上のなにもない空間が乱れた。ラグだ。
 実体化を解いて隠していたものが出てしまう。ぴょこんと伸びた二本の長い耳。白い毛に覆われたウサギの耳が。

「あ、あ、うえっ!?」
 
 動転してしまい耳をしまえない。ぴょこぴょこと右に傾き、左に傾き。秋乃のその様をじっと見つめる坊主頭の青年。
 見られたこんな
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