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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
闇寺
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たされた杯だけはこぼさぬよう手に持ちつつ、攻撃をかわす。

「どすこい!」

 幸兵の張り手が秋芳の顔面に向け突き出される。が、それも紙一重で避ける。

「どすこい! どすこい! どすこい! どすこい! どどすこーいっ!」

 張り手のみならず、蹴りや肘打ちもまじえた怒涛の攻撃を右に左にいなす。
 くるり、と。秋芳が身をひるがえしたと思った瞬間、幸兵の体が吹き飛んだ。襖を突き破り、隣室まで転がって行く。
 秋芳が放ったのは転身脚。ただの後ろ回し蹴りだ。
 ただの、と言うが後ろ回し蹴りというのは相手に対して一瞬だが後ろを見せる。そんな意表をついた動きがあるため、慣れてない者は避けにくい。ケンカしてる相手がいきなり背中を見せたら、対応に戸惑うものだ。

「イテテてて……、まいりました」
 
 そう言う幸兵の身にはラグが走っていた。なにかが憑いている。生成りだ。
 秋芳の見鬼が正体を見抜く。

「おまえさん河童の生成りだろう? さすがは相撲。格闘上手だな」

 すると今度は女性が、竹杖を持った静香が前に出る。

「次は私の相手を、呪術戦の指導をお願いします」

 そう言って竹杖を構えると、秋芳の返事も待たずに。
(くだ)よ走れ、急急如律令(オーダー)!」

 竹杖が中ほどから二つにわかれた。中は空洞になっており、そこから無数の狐が飛び出てきた。

「上だな」

 秋芳は畳の上を走る狐の群れを無視して、天井に向かって刀印を切った。

「ケンッ」

 鳴き声とともにラグが生じ、ひときわ大きな狐がぼとりと落ちる。

「似犬、等牙剥。疾く!」

 犬に似る、等しく牙を剥きたり。
 秋芳が口訣とともに簡易式を打つと、それは一匹の犬と化して落ちてきた狐に噛みつく。狐妖の多くは犬を天敵とし、その牙に弱い。激しくラグを起こす狐。

「わっ、降参、降参! その子は私の分身なの。離してちょうだい!」
「おまえさんは飯綱の生成りか。術が甘いな」 

 最初の狐の群れは注意を向けさせるための幻覚。穏形した狐。飯綱で攻撃してくると判断し、その読みはあたった。

「俺に負けたおまえらは罰杯だぞ。酒を飲むんだ。ま、勝った俺も飲むけどな」

 そう言って手に持った杯の中身を飲み乾す。酒はまだ熱かった。
 それからも酔った呪術者達が戯れに勝負を挑んできたりと、宴は長く続き、やがて終焉を迎えた――。





 膳や瓶子が散乱し、酔い潰れた者らがあちこちで寝息を立てている。
 宴の終わり。その余韻を味わいつつ、最後に残った酒をちびちびと飲む。

「秋芳〜、飲んでる〜?」

 笑狸がしなだれかかってきた。酒臭い。

「飲んでる。おまえも相当飲んだみたいだな」
「飲んだよ〜
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