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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
闇寺
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中に「あてなるもの。削り氷にあまずら入れて、あたらしきかなまりに入れたる」と、かき氷についての記述があるが、このかき氷にかけた『あまずら』がそうだ。

「ふぁ〜、この甘い匂い。なんだか良い気持ちになってきました…」
「まさか、これは密造――」 

 ふと気配を察して後ろを振り向く秋芳。そこには能に使う童子面をかぶった背の低い男が立っていた。小柄な体に不釣り合いなほどの櫃を背負い、腰には雅楽で使う(しょう)を差している。

「……シンニュウシャ、タオス!」

 男は面をつけていることをさしひいても妙にくぐもった、異様な声色をあげる。すると背にした櫃から四体の人形が飛び出した。
 人形はそれぞれ剣を手にした天狗、杖を持った翁、腕の巨大な獅子口、きらびやかな衣装の小面(こおもて)の面をつけている。
 童子面の男が笙を演奏すると、それに合わせて人形が激しく動く。小面がゆらゆらと舞い、天狗と翁が左右から、獅子口が正面から秋芳に迫る。
 人形たちはどれも大人の背丈の半分ほどの大きさをしている。せいぜいが小柄な娘程度だが、その動きは生きている人間とまったく同じに見えた。
 そして驚くべきことに呪力の類をまったく帯びていないのだ。
 これらの人形は式神の類ではない。
 そして呪術で操作しているわけでもない。

「はわわわっ!?」
「さがってろ。秋乃……。傀儡子か? 面白い技を使う。それは天岩戸の神話を模しているのかな? 天狗は猿田彦、翁は八意思兼神、獅子口は天手力男、女は天鈿女命だよな」

 童子面の奏でる笙の音色がひときわ強くなる。
 天鈿女命が眩惑するかのように激しく踊り、三体の男神らがいっせいに秋芳に跳びかかる。
 攻撃をかいくぐると同時に蹴りをはなつ。鋭い打突音がして人形の頭が割れ、胴が歪む。それでも人形の動きは止まらない。作りものだから当然だ。
 天手力男の腕が棍棒のように振られ、思兼神の杖と猿田彦の剣が手足を狙う。
 転がって避けつつ足を一閃。空手のあびせ蹴りや、カポエイラの蹴り技を彷彿とさせる足技だったが、狙ったのは人形ではない。
 笙を奏でる童子面と、男性神三体の人形たちの中間の場所を薙いだのだ。
 呪術をもちいない傀儡の技と見て、そこに細い糸があると予測し、それを断とうとしたのだが、しかし――。
 手ごたえがない。

「なんと」

 三体の人形がくるりと秋芳のほうをふり返り、残る一体。天鈿女命も舞いながら移動する。もし童子面が人形たちを糸で操っていたのなら、その三体と一体を操る糸は交差し、もつれてしまう。そんな位置関係にある。
 まさか呪術を使わず笛の音色『だけ』で人形を操るあやしの技なのか?
 ならば笙を禁じるか、それとも男を倒すか。
 どうする?
 考えをめぐらせ秋芳が見鬼を凝らす
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