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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
闇寺
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い。
 食事も一汁一菜が基本だが、それも厳密には守られてはいない。
 まして多額の布施をした『客』が望めば、それ相応の歓待をしてくれる。
 北辰山星宿寺とは、そのような場所だ。
 秋芳は傷ついた藤四郎吉光。骨喰を預ける場所に、ここ星宿寺という闇寺を選んだのだ。
 
 闇寺。
 陰陽庁の定める法からはずれた呪術者らが身を寄せ合う場所で、日本各地に存在する。
 陰陽庁を辞去した者。呪術の才はあるが宮仕えのできない性分の者。見鬼や生成りゆえに化物あつかいされた者などなど……。
 様々な事情で表の社会にいられなくなった呪術師たちの受け皿となっている。

 宿坊の大広間でひらかれた酒宴は大いに盛り上がっていた。
 山で獲れた猪や鹿、雉といった鳥獣の肉と山菜をふんだんに入れた鍋や川魚を使った料理の数々。それにくわえて大量のアルコール類。日本酒や焼酎だけでなく、洋酒のビンまでもが数多くころがっている。
 肉を喰らい酒を飲む。もはや薬食いだの般若湯だのといった隠語を使うのもバカバカしい。

「さあどうぞ、こいつはハワイ産のラム酒でね。日本じゃめったに飲めない上物ですよ」
「ははっ、こりゃどうも」
「本物の洋河大曲だ。このコクと匂いがたまらんでしょう?」
「ううむ、こりゃ強い!」
「黒龍、獺祭、醴泉、鳳凰美田。どれも銘酒ぞろいだ」
「ほほほ、ありがたく頂戴しよう」 

 宴会当初は客として上座に座っていた秋芳だが、宴が進むと自分の持ってきた酒を方々に振る舞い廻る。
 もぐりの陰陽師として活動していた時から、この寺にはなじみがあり、顔見知りも多い。
 骨喰を預かってもらうことに対して『感謝の気持ちを形にして施し供え』た秋芳は、そのついでに宴会を開くことを願い出て許しを得た。
 それだけの布施をしたのだ。
 参加は自由。無礼講とあって、寺の住人達は入れ代わり立ち代わりに饗宴を楽しんでいる。ちなみに用意された料理の食材と酒類。その半分は秋芳が持ち込んだ物で、調理のほうも秋芳自前の料理用人造式『保食(うけもち)』が担当し、寺の者の手をわずらわせてはいない。
 はぐれ者たちとよしみを通じるのも目的のひとつだ。

「大盤振る舞いですなぁ、賀茂の御曹司」

 スーツをラフに着崩した一人の男が酒を注ぎに来た。賢行という、この寺の阿闍梨だ。僧侶だが剃髪はしていない。寺の外で働くにはそのほうが都合が良いと言う。

「なぁに、星宿寺にはなにかと良くしてもらってますからね」

 注がれた酒を飲み乾して杯を返す。

「ところで……、賀茂様はえらく可愛らしい従者を連れておりますな」

 そう言って部屋の一角で猩々の生成り相手にテキーラの飲みくらべをしている少年を見つめる。秋芳の式神の笑狸だ。肩まである明るい色合いのにこ毛、華奢
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