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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
幼女伝
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秋芳の袖をひしっ、とつかむ。
 まるで幼子が父親にすがるような様だ。
 秋芳は一瞬、そう思った。

「…………」
「あなた。今、私のことを幼い少女だと思わなかった?」
「……ああ」
「私が小さくてかわいい幼女だからね」
「いや、小さくてかわいくて幼く見えるけど、幼女ではないでしょう、幼女では」
「ふふ、正直ね。でも幼女に見えないなんて残念。私のこといくつに見える?」
「十二歳」
「ああッ! 微妙! なんて絶妙な年齢を提示するのかしら。幼女というには少し大人でビターな味わいの少女の頃。あなたって、いけずね」
「あー、悪いけど俺ちょっといそいでるんで」
「待ちなさい。撞木娘ちゃんの話をくわしく聞かせて。先輩命令よ」
「ご先輩でしたか」
「そうよ。私は二年、あなたは一年。陰陽塾では奴隷の一年、鬼の二年、閻魔の三年という絶対的な封建主義が敷かれているから、先輩の命令は絶対よ」
「そんな男塾みたいなカースト制度ねぇよ! いや、くわしくもなにも、今さっき話したとおりの話ですよ。その様子だと聞いていたんでしょう?」
「ええ、聞いていたわ。あなたが撞木娘ちゃんを無慈悲に祓ったって」
「祓ってません。降したんです」
「え?」
「折伏して安全な寺にあずけました。今ごろフリーの式神してますよ。もっとも陰陽庁から見れば霊災あつかいでしょうが」

 霊災か式神かどうかは合法(資格を持つ術者の制御下にある。陰陽庁の許可を得ている等)かどうかで判断される。
 古来より存在する神霊の類でも、陰陽庁によって『霊災』あつかいされることもあるのだ。

「良かった、撞木娘ちゃんは無事なのね。でもせっかく降したのにどうして自分の式神にしなかったの? 幼女だったんじゃないの?」
「いや、幼女て…。俺はむやみやたらと式神を持たない主義なんです」
「もったいない。私なら式神にする」
「そうですか」
「幼女の式神を何十人も集めて身の回りのお世話をしてもらうの。食事の給仕から着替えの手伝い、お風呂では背中を流してもらったり、かわいい幼女になにからなにまで……。ああっ、天国! ヘヴン!」
「ずいぶんと幼い女子がお好きなんですね」
「当然よ。成長しきってない細い肩、強く握ったら折れてしまいそうな儚げな四肢、ふくらむ前の小さな胸。至高の芸術と言っても過言はないわ。私は幼女を愛でるという高雅な趣味。ロリータ道の求道者。ロリータ道とは陰陽道から分派独立した精神修養の道で――」    

(そっとしておこう)

 自分の世界に浸る謎の先輩を放置して、秋芳はその場を後にした。





 秋も近づき、日の落ちる時間も早くなった。そんな夕暮れに染まった陰陽塾の校舎を見上げていると、どうにも心が騒ぐ。

(やっぱ黄昏時ってのは妙にワクワクする
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