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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
幼女伝
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色町があり、そこの遊女は撞木娘と呼ばれ、江戸庶民の間でも撞木娘と言えば遊女をさすようになった。
江戸時代に重要だった五街道のうちの一つが中仙道で、途中には宿場町がある。宿場町には
飯盛女
(
めしもりおんな
)
と呼ばれる仲居が働いているのだが、その多くは非公式の遊女だ。
貧困のために無理やり売られてきた少女が多く、その過酷な環境から逃げ出しても家には帰れない。売られた金額分の客をとらずに逃げ帰ったりすれば、女衒の雇ったヤクザ者たちから酷い仕打ちを受けるからだ。
進むも地獄、退くも地獄。行く場所もなくさまよった末に力尽きた遊女達の骸は碓氷峠に捨てられ、野ざらしにされたという。
その怨念が妖怪・撞木娘と成ったのだ。
秋芳はそのような霊災を過去に降したことを京子に話した。
「あの娘はそういうタイプ・スペクターの霊災だったな」
タイプ・スペクター。俗に言うところのアンデッド・モンスターで、いずれも伝承にある『死んでからよみがえった』怪物に類似する特徴をもった動的霊災。あるいはそれらの生成りをこのように分類している。
ちなみに現在の汎式陰陽術ではいわゆる『幽霊』と呼ばれるような存在を通常とは霊相の異なる特殊な霊災として定義しており、これらタイプ・スペクターには分類されない。あくまでも『亡者のような』外見・特徴を持った霊災に対してタイプ・スペクターと呼称しているのだ。
あまりに霊力の強い人間や様々な呪的条件がそろった場合、人は死後、その残留霊体が特殊な霊災の核となることがある。この『本物』の幽霊はおもにタイプ・オーガに分類される傾向にある。
「……遊女の霊だなんて、ひどい話ね」
「ああ。…そのさまよう幼い少女の幽霊の話だが、俺の知るかぎりそんな痛ましい事件が渋谷で起きたなんて記憶にない。たんなる噂だと良いな」
「そうよね。そんなかわいそうな子、いないほうが良いわ」
わかれのキスをしようとしたが、周りに人の気配があったので普通にさよならをして、きびすを返す。呪練場にまだ春虎がいるかも知れないので、様子を見に行くつもりだ。すると――。
「シクシクシクシク……」
秋芳の耳に奇妙な泣き声が聞こえてくる。
「かわいそう…、撞木娘ちゃんかわいそう…」
屋内に植えられた竹の陰で一人の少女が悲しげにしていた。
周りに感じた気配はこの少女のものだろう。
見覚えのない顔をしている。ショートヘアでずいぶん小柄だ。サイズが合っていないのか制服の袖があまっている。
なかなか整った顔立ちをしているのだが、妙に存在感が希薄で、なんともいえない透明感があった。
そんな少女が無表情でシクシクと声をあげて涙も流さずに泣いている。
不気味だ。
(そっとしておこう)
黙って横を通り過ぎようとした
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