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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
幼女伝
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気だ。
後方を振り返る。薄暗い路地の向こうから、なにかが近づいて来る。
秋芳の反応に遅れるかたちで春鹿もピクリと反応をしめす。秋芳が見つめている方向に顔を向けて、目を細ませる。
「……霊災。かなり大きい。これってもうフェーズ3?」
霊気が歪に偏向し、瘴気と化した存在が姿を現す。
それは幼い少女の姿をしていた。春鹿と同じか、それよりももっと幼い。
「ママのおうちに行きたいの。お兄ちゃんたち知らない?」
透き通るような蒼白い肌をした黒髪の少女は心細げに訴えかけてくる。その姿は見る者の保護欲をかき立て、すず先輩でなくても抱きしめてしまいそうになるだろう。
「ねぇ、一緒にママのおうちを探してくれる?」
今にも泣き出しそうな表情で懇願してくる。
「ねぇ、どうするのさこいつ。祓っちゃう?」
秋芳はじっと少女を見つめる。瘴気のかたまり、移動型・動的な霊災。五気の偏向は見られない。いわゆる『幽霊』の類ではないだろう。
「街の噂が霊災を起こしたのか、この霊災が街の噂のもとなのか、いずれにせよこの世をさまよう死者の霊なんかじゃないのは幸いだ。さすがにそういうのを力づくで祓うのは気が引けるからな」
「噂って、あんた人の想いが霊災を生み出すって説を信じてるタイプ?」
霊災というものは人の想いの影響を受けやすい。
こんな妖怪がいるんじゃないか?
あの人は死んで幽霊になったんじゃないか?
このような人々の想いがフェーズ3以上の移動型・動的な霊災。俗に言う幽霊や妖怪変化の類を産み出すことが多々ある。
霊災に接し、呪術を生業とする者たちはそのような考えを古くから信じており、秋芳もまた、そう信じている。
「おまえは否定派なのか?」
「ん、今のところ否定も肯定もしない。答えを出すのはきちんと実験して結果を出してから。同じ条件で同じ実験を繰り返して、誰がやっても同じ結果になって始めてあたしは判断する。霊災に関しちゃ謎が多すぎだから、今はなんとも言えないわけ」
「なにやら『研究者』みたいな口ぶりだな」
「……勘の良い男ってキライ」
「ん? なんか言ったか?」
「べつに〜。それよかどうすんのさ、この霊災。あんたの考えだとタイプ・レジェンドに分類されるわけだけど」
タイプ・レジェンド。昔からの伝承や神話や伝説に登場する神魔でななく、口裂け女や人面犬、テケテケやカシマレイコ、マッドガッサーといった都市伝説に出てくる怪異に類似した動的霊災をこう呼ぶ。
「もしくはタイプ・スペクターか、最近あのタイプがやたらと多いんだよな」
「へぇ、そうなんだ」
「そうなんだって、おまえ霊災関連のニュース見てないのかよ?」
「うっさい。やることが多くてそういうのチェックしてるヒマとかないし。
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