105香里さんの昇格
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少し笑いながら頷き合うと、秋子は事務員に向って言った。
『天野さん、さっき本家に送ったメールを訂正して下さい。相沢祐一の婚約者は美坂香里、美しい坂に花の香りの香、里山の里です。候補の二番目が栞さん、三番目がうちの名雪です、分かりましたね?』
「えっ? はいっ」
秋子から「内密に」と頼まれていても、本家から制裁されるのを恐れて、即座にメールを送ったのも見透かされ、逆に情報源として利用される天野家の事務員。裏の世界でその噂が広まるのに時間は不要だった。
そこで秋子は再び現金を持って栞に差し出した。
「これはどうしても受け取って貰います、これから貴方も戦わなくてはいけません、そのための道具の使い方を覚えて下さい」
「はい、分かりました」
栞は渋々戦いのための武器を受け取った。
『貴方にはもう一つ、武器を授けます。さっきから私の話し方がおかしいと思える時がありましたね? これは自分より下位の者に命令して、屈服させる力です、試してみて下さい』
『こうですか? 分かりません」
『ええ、その調子です。以前、貴方と祐一さんが愛し合ってから急に力が大きくなったのには気付いていると思います、まず、天野さんに何かお願いして見て下さい』
「えっ?」
『ジュースのおかわりでも、お茶を入れるよう言っても構いません。強く願って下さい、さあ』
栞は躊躇したが、強く願える言葉が一つ見付かった。
『天野さん、倉田の一族の私ですけど、これからは仲良くして下さいっ』
「はい……」
『それと、お茶もお願いします』
「わかりました……」
暫くすると、事務員は笑顔でお茶のお代りを入れ、前の湯のみを回収した。
『少し効いたようです。これからしばらく、その声を練習して下さい、お姉さんにも効くかも知れませんね』
『そうなんですか?』
『それとこれは忠告です、親族の家に行っても、どこかでお茶や食べ物を出されても、貴方が支配済みの相手以外から受け取るものは毒か薬物が入っていると思って下さい。食べても飲んでもいけません』
「ええっ?」
薬物と術に耐性がない栞は、特に注意を受けて他人からの飲食物の提供を禁止された。例のホストは天使の人形が付いている上での飲食なのでキニシナイ。
(栞ちゃん、力が欲しいかい? 欲しければもっと上げるよ?)
栞には天使の人形の分体、栞の元にやってきた祐一を受け取る権利がある。妖狐の力の一部で一弥と同じ存在、舞の魔物より強力な精霊を受け取る権利が。
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