105香里さんの昇格
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じ込めるはずです。その時は私をイメージして跳んで下さい、長距離の転移の力を使うのを『許可します』」
栞の中で制約が外れ、過去に使っていた遠距離の「転移」の力が使えるようになった。
「貴方を自分の養子にしようとしたり、お腹の中に赤ちゃんができれば、必ず醜い争奪戦が起こって、とても口にはできないような酷い事が起こります。貴方はそんな世界には耐えられない、生きていけないんです」
両手で顔を覆って、泣き始める秋子。栞も自分の酷い将来を思って泣いていた。
「貴方をこんな醜い世界に引き込むんじゃ無かった、貴方に必要だったのは、こんな力じゃなくて、お姉さんのように醜い世界でも戦い抜いて、未来を勝ち取る力だったかも知れない」
これからの自分に必要なのは、今の破壊の力ではなく、姉のような鋼の心と、ワイヤーのような図太い神経なのかもしれない。栞は少しだけ姉を羨んだ。
「秋子さん、栞、なんかあったらあたしがぶっ潰してやるから、泣かないでよ」
「いけません、真琴は破壊と破滅の力を選ばないで」
天使の人形がこの世を始末すると決めた時、唯一対抗できそうなマコピー、それまでにいろいろな魔法は覚えさせるが、自分と同じ破滅の力は覚えさせたくなかった。
二人で暫く泣き続け、何かを思い付いた秋子は顔を上げた。
「これから一時的に、私が認めた婚約者の立場を香里さんと入れ替えます、いいですか?」
「え? どうしてですか?」
意味が分からず聞いてしまう栞。邪悪な姉は悪巧みも見ぬかれ、祐一にも見下げ果てられ、先日敗退したばかりだが、学校や病院で暴れ回り、テレビの放送まで使って、香里の味方をしない人物は人非人で救いようの無い人物だと世論を醸成させていた。
「貴方達が売り渡された後、重宝される栞さんと違い、力を上手く使えない香里さんの立場は低いものになります。差が有りすぎて会うこともなくなるかも知れません。でも、香里さんが婚約者だった場合、貴方達は互角の立場で扱われて、羨望や嫉妬の矢面に立つのは香里さんになります」
その後はどうなるか、神ならぬ栞にも簡単に想像が付いた。
「後はあの意地悪と悪巧みを発揮して、大声で当主や親族を操って、泣き喚いて被害者に成りきって親族一同を巻き込んで、テレビの取材班を引き入れて放送させたり、同級生も呼んで合唱させたり、嫁いびりをする人がいれば警察や弁護士でも入れて証拠を集めて逆に陥れてくれます」
閉鎖的な古い名家で散々な目にあわせられる予定の自分と違い、気が強い姉ならいつまでも暴れ回って相手の気力が尽きるまで家を破壊してくれる。
先程想像していた悲惨な未来が、ほんの少しの立場の違いだけで、ここまで面白おかしい話になってしまうとは思わず、秋子も栞も笑いが込み上げて来ていた。
「はい、分かりました、お任せします」
二人で
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