105香里さんの昇格
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を後見人として立てる方法などが教えられた。
「あの、両親と裁判で争わないといけないんですか? それならお金なんかいりません」
弁護士は気の毒そうな表情で年若い娘を見たが、分かりやすい言葉で解説してくれた。
「芸能人の子役とかでよく聞くでしょう? お子さんがいくら稼いでいても、両親が事業や投資に手を出してしまって、気が付いたら一銭も無くなっていて、借金まで背負い込んで、体一つで何年も掛かって返済した話を」
「はい……」
とりあえず栞の預金は、他人に引き出せないよう、両親や親族が無理に引き出せないように処理された。
更に残りの札束を差し出され、ポケットか財布に収めるよう指示される。
「これは今日の交通費です。『これから貴方は一人で外出することを禁止します。電車やバスを極力利用せず、家の前までタクシーを呼んで、攫われないよう注意して、降りる場所や周囲にも十分警戒して下さい。特に後ろから近寄ってくるワゴン車には、どんな事があっても引き込まれないよう注意して下さい』
「え?」
秋子の警告は理解できたが、栞にはどうしてもできないことが一つあった。
「あの… すみません、秋子さん、盗んだお金には手を付けられません」
先程の事務員を思い出し、秋子に歯向かってしまった自分の無謀な行動に身を震わせながら、審判を待った。
「貴方は清潔ですね、とても好ましいです。それに羨ましい」
自分の反逆を、怒るどころか褒められたのに驚く栞。秋子は何故か微笑んでいて、自分を羨ましそうに見ていた。
「やっぱりご両親の教育が行き届いていたんですね。でも、こんな汚らしい物が貴方の大切な家族を蝕んで、穢していくんです。貴方は近々、母方の親族の有力者に献上されて、お金で売り渡されるでしょう」
「えっ? うちの両親が?」
病気の自分を大切にして、ここまで育ててくれた両親が、そんな事をするとは考えられなかった。
「貴方のご両親は、それが貴方のためになると説得され、勘違いして送り出すんです。権力者の命令があれば、犬のように喜んで従ってしまい、優雅な暮らしにあこがれて、衣食住に不自由せず自由にお金が使える。自分の手に持っていないから、そんな物が幸せだと思ってしまうんです」
もう涙ながらに話す秋子。それは千里眼の力ではなく、経験則から語られているのだと思えた。
「それって、千里眼で見えたんじゃないですよね、秋子さんもそうだったんですか?」
「未来予知です。もし貴方の力が、あの人達より強くならなければ、この話は現実になります」
悲しそうに、苦しそうに答えたが、その表情に嘘は無かった。
「あの手の人達は、親族の中で高い地位や発言力を持つことにだけ魅力を感じて、権力闘争のために貴方を道具として利用します。それに「貴方を守るため」と称して、座敷牢のような場所に閉
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