105香里さんの昇格
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ったが、色々と無理を通すため、持ちつ持たれつの関係を保つ必要があった。
「まだ通報していませんが、天野の家から警察の方が来る手はずになっています」
「ええ、分かっておりますとも、証拠作りにもご協力しますよ、そしてこの現金が「色の付いていないお金」と言う訳ですな? いや〜参りました」
たった一日で父親の生涯賃金を稼ぎ出してしまった栞。銀行員もここまでの上客を手放せるはずもなく、揉み手をしながら媚を売っていた。
「この子のご両親が持って帰ったのは、表の謝礼金ですので、ご心配なく」
会話に参加できない栞だったが、自分の耳が腐って行くのは理解できた。
やがて札束の数え直しも終わり、二重三重に数え、真贋の判定も終わった所で預り証が出された。
「ええ、それでは合計二千八百万円のお預かりになります。端数はご指示通りお返しして、後ほど顧問弁護士が参りますので少々お待ち下さい」
栞は自分の両手も腐って、ポケットやスカートの中は腐臭がして、心も体も隅々まで汚れたのに気付いた。
「お手数をお掛けしました、これは少ないですが交通費ですのでお納め下さい」
徒歩圏内にいる行員に交通費も無いが、端数から謎の茶封筒に入れられた交通費が三人の行員に渡された。栞は自分の目も腐って行っているのに気付いた。
「いやいや、本来こういった物は受け取りを禁止されているのですが、最重要のお得意様からの心付けをお断りするのも何ですので、行員一同の親睦会費用として頂戴しておきます。毎度毎度有難うございます」
若手の行員たちも臨時収入に喜び、笑顔で茶封筒をポケットに入れた。
「こちらが取り戻した盗品の目録と、持ち主の住所氏名です。それにしても、返す時にどなたか一人ぐらい、この事務所が窃盗団のアジトだって訴えそうな物ですけど、どうなってるんですか?」
それを聞いた事務員が、割り込んで説明した。
「あ、警察からも内々に連絡するんです。表から返して欲しい人は警察で泥棒扱いされて長々と取り調べされて、手続き手続きでたらい回しになって、書類の代書だとか色々理由を付けて、ここに誘導されるんです。表に出せない人は直接ここに来て、謝礼に一割ぐらい払って当日返してもらえるんです」
社会の腐り果てた仕組みに反吐が出そうな栞。そう言えば自転車を盗まれて警察に被害届を出した時、自分が逆に泥棒扱いされて、いつの間にか取り調べを受け、自分で見付け出して報告したら、今度は保険金詐欺扱いで取り調べされた苦い記憶が蘇って来た。
やがて銀行員達も帰り、入れ替わりに顧問弁護士がやって来ると、法的な難しい話をされた。
栞には大半が理解できなかったが、両親や親族が金銭の譲渡を要求した場合には、育児放棄や虐待といった内容で絶縁して逆に親族を訴え、接近禁止や他家への養子縁組により、資産家の秋子
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