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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 49
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た。
 なら、彼にも伝えるべき言葉が残っている。
 「甘やかしちゃいけません! 甘やかされた三つ葉は根深く数を増やし、将来的には農作物にも悪影響です。実際問題、風に飛ばされた種子の悪戯とか、目に余るものがあったでしょう?」
 「いや。ウチから飛んでった種子かどうかを疑われたのは確かだが、果樹園自体の潔白は直ぐに証明されてたし。なにより、手土産に持って行ったオレンジの実や副産品を気に入ってくれる方が多くてな。広がった分の風評被害と同じだけ注文数が増加していくもんだから、正直かなり助かってた。被害者が出てる話で無神経だとは思うけど、従業員の給料を増やせてるのは大きいぞ」
 「なんとっ!?」
 彼にも大迷惑だったシャムロックの行為は、一方で利益向上ともしっかり結び付いていたらしい。無論それは、彼のオレンジに対する真摯な愛情と逞しい商売根性があってこその結果だが。
 「え、じゃあ、ピッシュさんがくれたあのマーマレードには特に他意とか無くて、本当に……」
 「単なるお礼だ。先日も新規で大口の契約が結べたから」
 「ふえぇぇ。私はてっきり、偉い人の密命で目印代わりに持たされてたのかと。事象の逆算だけじゃ判らないものですねぇ」
 「計画と目標はある程度望み通りの結果を引き寄せるが、結果から偶然と必然を選り分けるのは至難の業だからな。決定的な間違いを犯さないよう、思い込みには注意しておけ。これ、経験者からの助言。」
 「勉強になります! ……でもやっぱり、土に含まれてる栄養には限りがあるんですから、三つ葉の分は実りある作物へ回してください。私は遠くでみんなの様子を満足気に眺めてますから。ね?」
 「……了解。ま、頑張れ」
 「はい! 今迄本当に、ありがとうございました!」
 髪をくしゃくしゃに撫でられ、嬉しさと気恥ずかしさと、ほんのちょっぴり雑じる寂しさを誤魔化すように、歩く速度を上げて前へ進む。
 「あ。そうだ、ピッシュさん」
 「ん?」
 彼の数歩分先でくるんと転身。首を傾ける。

 「マーシャルさんの誘いに乗らなかったのって、ハウィスが恐かったからですか?」

 ハウィスは、マーシャルを含めたブルーローズの総人数を「十四人」、表舞台に出ていたのは「十三人」だと言い切った。イオーネも、ブルーローズは「十三人」だと思っていた節がある。
 だとすれば、イオーネに認識されてなかった残りの一人は何処へ行ったのか? 何をしていたのか? マーシャルに手を出さなかった構成員との関係は?
 様々な情報を吟味した上での推測でしかなかったのだが、彼は間髪を容れず「まさか」と笑った。

 「ハウィスを愛してるからだ」

 これこそ まさかの ド直球。
 「……こういう時の男性って、態度で察しろとか、女性を幻想世界の住民扱いするものだと思っ
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