Side Story
少女怪盗と仮面の神父 49
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ず交渉に不可欠な後ろ楯を得るなんて、よほどの幸運と強運に恵まれていなければ、ありえない話だというのに。
目の前で両親を殺されたマーシャルが町民にどんな目で見られていたか、エルーラン王子は知らない。
マーシャルの心が壊された瞬間を、年齢に不相応で異様な言動の数々を、エルーラン王子は見ていなかった。
帰る家と職を失った元貴族の少女が、最終的に売春と呼ばれる犯罪行為に走るしかなかった現実を、エルーラン王子はどう捉えているのか。
今この瞬間、全身ズタボロなあの子を前にしても。
果たして、彼は「正しくあれ」と言え…………
(……あの子は……どうして、こんな所に居るの?)
物も人も流れが少ない国端では、盗める物など極端に限られている。
一日でも長く生きたいと願うのなら、捕まる可能性がどんなに高くても、多くの人が物を求めて行き交う大きな街や都へ向かう筈だ。
現にブルーローズもそうしていたし。
居住地の規模と犯罪発生率は大体比例する。
なのにバーデル王国から国境を乗り越えてきた浮浪児であろうあの子は、立地的にも経済的にも行き止まり状態のネアウィック村に侵入し、菜園主や自警団を装う騎士達に追われている様子もなく、水際に一人で立っていて。
(何を見てるの? 盗みが目的じゃないなら、何をしに、ここへ来たの?)
あなたは
「どうしたい?」
尋く声は少し、震えた。
「これから、どうしたい?」
女の子の肩が微かに揺らぐ。
やや間を置き、海に向かっていた視線がゆっくり振り返って……
「ちょっと待った」
「?」
軽く持ち上げた左手で話を遮るミートリッテに。
ハウィスの両目が瞬いて傾く。
「いや、その……。もしかして、なんだけど……あの時の私、ハウィスには自殺志願者とかに、見えて……た?」
恐る恐る尋ねてみれば。返ってきたのは、肯定を表す頷きと苦笑い。
「うわああ……っ! それで、私に生きたいかどうかって尋いたんだね?? 私が自殺するつもりなら止めようと思って……っ」
「いいえ」
顔を見合わせる前から、そんな心配をさせてたのか!
と、頭を抱えた瞬間、ハウィスがきっぱり否定する。
「……いいえ。貴女が、もう嫌だと、死にたいと答えていたら、私は即座に貴女を殺していたわ。そして、私も一緒に死んでいた」
なんでもないことのように紡がれた言葉が氷の槍となり。
ミートリッテの脳と心臓を貫く。
衝撃で跳ね上がった視界の先で、群青色が目蓋の奥に隠された。
「他にどうしていいのか、分からなかったから。せめて最後くらい、誰かの願いを叶えてあげたかった。浮浪者が諦めている
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