Side Story
少女怪盗と仮面の神父 49
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の気なしに足先を向け。
波打ち際で水平線をじっと見つめるボロボロな背中を見つけて……
氷が、ひび割れた。
まとまりなく伸びて千切れた髪。
植物や泥などで汚され、袖や裾が無惨に引き裂かれているワンピース。
隙間に覗く細い両手足は、折れていないのが不思議なほど傷だらけで。
菜園方面から女の子へ続く足跡には、靴底と指の形が両方刻まれていた。
どう見ても一般家庭の健康的な子供ではないその後ろ姿に、心を壊された幼いマーシャルの、首を切って倒れたウェミアの、義父の帰りを待ち続けるアルフィンの幻影が重なる。
体の奥でパリン、パリンと、ガラスが砕けていくような音が響く。
ああ…………
この世界はなんて醜く、残酷で、理不尽なのか。
確かに、ブルーローズは方法を間違えていた。
その日暮らしもままならない弱者達を助けたい、護りたいと言いながら。
人間社会の仕組みなど深く考えもせず、ろくな将来像も描いてなかった。
足りない物なら、溢れて見える所から持ってくれば良い、などと。
盗まれる側の事情は気にもせず、目を向けようともしなかった。
結果、行き場を失くしてさまよう人が増えるだなんて。
アルフィンのような子供が増えるだなんて。
想像すらしていなかった。
本当に、短絡的で愚かだとしか言いようがない。
そんな自分にエルーラン王子は、社会のあり方に不満や意見があるなら、己と異なる立場の者達と話し合い、問題点を洗い出し、相応の後ろ楯を得て保身を図り、周囲の状況を見極めつつ、権力者達を相手取り、一定の譲歩を見せながらも、己側の利になる物事を引き出せ、と言った。
それはきっと、犠牲を最小限に抑えられる正しい方法なのだろう。
ある程度の力を身に付けていた大人達なら。ブルーローズなら。
彼の言葉通り、正しくあるべきだったのかも知れない。
けれど。
だったら、誰かに何かを託して結果を待つ余裕もない飢餓と毎分毎秒戦い続けている浮浪者達や、救助の求め方を覚えるよりも先に最も身近な庇護を失ってしまった幼い子供達は? 彼ら弱者は、いったいどうしたらいい?
国内の執政者達を束ねる王族の支援も届かない、ごくごく稀に与えられる一般民の気まぐれな同情や義賊の支援がなければコップ一杯分の飲み水すら満足に得られない彼らにも、周到な用意とそれに掛ける膨大な時間が必要な正しい方法を踏襲しろと言うのか。
そもそも、弱者や被害者を足手まとい、汚点、生産性に欠ける塵屑などと蔑み疎むこの社会において、幼い子供や障害を負った者達が、その身一つで犯罪行為もせ
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