104金の卵を産む鶏
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、耳が腐って行くような感じがした栞。
「天野さん、金の登録ぐらいどうにでもできますよね?」
「はい、天野の家でやりますので、お任せ下さい」
尊敬していた秋子も、正義の味方などではなく、汚くて怖い裏の世界の人間だと知り、自分もその一員だと思い知った栞は、観念して秋子の思い通りにすることにした。
「じゃあ、金塊二つお預けします。売れたら手数料を引いて、この子の口座に振り込んで下さい」
「分かりました」
重い金塊は、事務員の女性の手によって金庫まで運ばれ隠匿された。秋子は帯封のされていない、十万円づつ分けられている端数の現金を三つ四つ取って事務員に渡した。
「これ、少ないですけど今日の場所代です」
「いえ、秋子様からお金を頂くなんて、家の者に叱られてしまいます。それに、これだけ大きな窃盗事件の手柄がうちに転がり込んでくるんですから、これ以上頂いたら罰が当たります」
秋子に「様」を付けて丁重に断る事務員。栞としても、自分も「様」を付けるべきか迷った。
「では、口止め料として受け取って下さい。これから私達は盗品を私物化します、叔父様には言い付けないで下さいね、うふっ」
「あははっ、そんな事言えませんって、でも頂いちゃっていいんですか? いつもいつも済みません、有りがたく頂戴します」
事務員は両手で札束を持って額の上に上げて拝んだ。栞も、こんな事が「いつもいつも」起こっているのだと思い、諦め顔になった。
「それにしても凄いお嬢さんですね〜、遠寄せと千里眼の両持ちですか、どこで見付けて来られたんですか?」
栞は事務員に頭を撫でられ、抱き付かれそうな勢いで可愛がられていた。
「ええ、美坂栞さんと言って、祐一さんの後輩です、できるだけ仲良くしてやって下さい。でも、血族としては、倉田の分家筋に当たるようです」
「あ? あの裏切り者の?」
事務員は汚い物に触ったように手を離し、服で手を拭った。
「やめて下さい、この子は祐一さんの彼女で、お嫁さん候補ですよっ」
今度は驚いて目を見開き、手のひらを返すように床に膝を付いて詫びに入った。
「大変失礼しましたっ、祐一様の奥様候補とは知らず申し訳ありません。やはりご身分が違いました、お許し下さいっ」
床に手をついた後、祈るような格好で震える事務員。栞もすぐに席を立って事務員の手を上げさせた。
「そんな、やめて下さい、私はそんな偉い人じゃありませんっ」
「祐一さんに別の婚約者がいるのは内密にお願いしますね。それにしても貴方達は、本当に倉田と仲が悪いんですねえ、もういいですよ、受付に行って下さい」
困り顔で見ている秋子に気付き、立ち上がって受付に戻る事務員、その間にも何度も頭を下げて腰を低くして移動していた。
秋子や祐一を様付けで呼ぶ人達がいて、倉田家が嫌われ、身分がどうこう
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