104金の卵を産む鶏
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る栞、やがて重い物は自重でスカートから出て床に転げ落ちた。
「あら?」
床には刻印がある金塊が転がり、鈍い金色の輝きを放っていた。
「栞さんは本当に金の卵を産むんですね」
「ち、違いますっ」
秋子の下品な冗談を理解できず、真っ赤になって否定する栞。
「冗談です。でも、これをお返しできれば喜ばれるでしょうね、高価な物ですから」
マコピーはポケットを使わず、適当に空中に穴を開ける方法を見つけ、そこから金塊を落とした。
栞も再度手を突っ込み(どこに?)、3個目を産み落としたが、金ではなく黒いケースだった。
「あ、それは開かない方が」
無理に制止しないでいると、栞はケースを開いてしまい、中には拳銃と弾丸が入っていた。
「何ですか? これ」
「危ない物ですから、手袋をしたまま蓋をして下さい。天野さん、目録を作って下さい、盗品と危険物が出ましたから後で一族の警察の方を呼んで下さい」
栞は何か大きな事件を解決したようで得意になっていたが、客観的に見れば盗品を盗み返した窃盗犯である。
まあ「初犯」「未成年」「女性」のカテゴリーで、自分が世界最高額を盗み出した大泥棒になったのには気付いていない。
「残念ですけど、この金塊と現金は、盗品を売り捌いた後のお金のようですね、元の持ち主が見えません」
手袋をした秋子は、盗品とそれ以外を分けて行き、小さい袋に宝飾品を入れ、メモに持ち主の名前と簡単な住所を書いて分類して行った。
「あの、どうして名前や住所まで分かるんですか?」
「千里眼の力ですよ、栞さんも持っているようですから、後でお教えしますね」
呆気にとられている内に仕分けが終わり、警察に引き渡す物は鞄に入れられ、机の上には現金と金塊が残った。
「これは貴方が持っていて下さい、今日のお駄賃です」
秋子が信じられない事を言ったので、耳が理解しようとしなかった栞。
「え? 何ですか? これも返さないと」
「正確には「返せない」です。これから来るのは天野の家の警察官僚ですが、こんなオカルト事件を担当する部署はありません。「遠寄せの術で泥棒の金庫から引き出した」なんて言っても無理です。これから通報して、どこかのオークションに流れたのが偶然見付かったという偽の証拠から令状を作って、やっと窃盗犯の事務所が捜索されるんですよ」
「はあ……」
秋子のやたら現実的な手順の説明で、過去に何度も同じ事が行われたのだと思う栞。
「それが上手く行ったとしても国庫に入るだけ、売られた物はどこに行ったか分かりませんから、弁済する相手も分かりません。引き渡してもまず最初に天野の家が隠匿するでしょうし、警察官僚の賄賂や飲み食いに使われて、名義の分からない金塊も、せいぜい政治家の賄賂になって国外に出て行くだけです」
この国の汚い仕組みを聞いて
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