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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
残照 3
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るとしたら、こんな感じか」

 ピヒィィィイン――!

 鷹寛の台風という言葉に反応したわけではないだろうが、異形の動的霊災がこわれた笛のような甲高い叫びをあげると大旋風が巻き起こる。
急急如律令(オーダー)
 鷹寛が落ち着いて一枚の符を投じる。
 金行符。
 風は木気と金気のいずれかにかに属するが、木気を帯びた怪物の放つ風ゆえ金気で対抗するべきと判断したからだ。
 金剋木。
 五行相剋の理にもとづき、暴風は金気の楯にふさがれた。
 金気と木気の相剋に大気が激しく鳴動する。
 風は防いだ。
 だが、そこに込められた瘴気までは防げなかった。
 高濃度の瘴気があたりを吹き抜ける。
 体中の細胞と神経が、汚水で流され満たされるような悪寒。魂が凍りつき、恐怖と絶望が思考を停止させようと心を蝕む。
 並の人間ならばそれだけで死んでしまってもおかしくはない。

「オン、コロコロ、センダリ、マトウギ、ソワカ!」

 秋芳はあらゆる疾病を癒す薬師如来の小咒をとっさに唱え、瘴気を無効化する。

「ほう、やるな。さすが賀茂の御曹司」

 そもそも呪禁師は宮中に医師として仕えた存在。ケガや病気の治癒といった状態異常の回復が専門なのだ。

「だがやつはなんだ? あんなタイプの霊災は見たことも聞いたこともない」
「さしずめタイプ・インディファイナブルとかネームレスだとかじゃないですかね。あの名状しがたい空飛ぶポリプは」

 ポリプというのは、クラゲやイソギンチャクのような刺胞動物の体の構造のことだ。

「ふ〜む、しかしあの目の数……。ひょっとしてあれが噂の百目鬼ではないか?」
「……俵藤太が退治したといわれる下野の国の百目鬼。ははぁ、なるほど。ムカデつながりですか」
「鬼でもムカデでもいいけど、木気だと私の得意な電撃と同属性だからやりにくいわねぇ、もう」
「ちょ、ちょっとお三方! なに呑気に会話してるの! あんな怪獣みたいな霊災を修祓するつもりなんですか!?」

 怯えの色を隠せない純の問いに対し。

「「そうだ」」「そうよ」

 三者、異口同音の答えが返る。

「そ、そうって……、本気?」
「木ノ下先輩。ケンカで大事なのは技でも力でもない。胆です。気圧されたらそこで負けなんです。霊災修祓だって同じですよ」
「うむ。どの道この距離じゃまともに逃れられん。やるしかないしな」
「私たち夫婦にまかせなさい。最悪あなたたちだけでも逃がしてあげるから」

 その時。突然、あたりの霊相に変化が生じた。
 空飛ぶポリプ――百目鬼――の放つ気と同等。いやそれ以上の莫大な気が秋芳たちの立つ場所を中心に湧き上がる。
 京子だ。
 京子の体から膨大な気が、たとえ見鬼でなくても視認できるほどの霊気があふれ
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