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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
残照 2
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 純の診断はすぐに終わった。
 不自然な憑依状態というわけではないので改めて治療を施す必要などなかったからだ。
 生成りではなく先祖返りということで、身に宿る獣の魂を強引に抑えつけたり、祓うのではなく、制御する方法をいくつか伝授されたのみ。
 身に異形の力を宿し、行使する。
 これは呪術師にとって大きな強みになると同時に一種の箔がつく。
 現役の十二神将の中にも、降した鬼の持つ力を自身のものとして使役・利用することで強大な戦闘力を得ている者がいるが、畏怖の対象になっている。

「わざわざこんな遠くまで来たのに、たったこれだけで帰らせたら悪い。せめて治療の真似事をさせてくれ」

 そう言って陰陽医が用意してくれたのは桃の実入りの風呂だった。
 桃は昔から邪気を祓う神聖な植物とされていて、軽度の霊障ならばこれだけで治せると言われている。

 沐浴した後、縁側で身を涼めている純。そして隣にはつき添いの秋芳。

(しかし木ノ下先輩。こうして見るとずいぶんと色っぽいな。春虎が惑わされたのもうなづける)

 風呂上りの火照った身体を薄手の湯帷子で包み、風にあたる純の姿は女にしか見えない。
 始めて見た時は化粧のせいもあり『美人』よりは『かわいい』タイプに思えたが、こうしてすっぴんだと、その印象は逆転する。

(こっちのほうがいいな)

 失恋や霊災が重なったせいで、明るい仕草や表情も鳴りを潜めているが、その伏し目がちな所作が逆に艶っぽく、色気がある。

 正直、そそられる。

(身にまとう気はたしかに男のものだが、なんとも艶めかしい。まるで歌舞伎の女形のようだ)

 たとえ呪術師でなくても、なんらかの分野で『一流』の域に達した者は非凡な気をまとう。
 身も心も異性になりきっている役者のまとう気など、プロの陰陽師でも男女の見分けをまちがえるかもしれない。

「よかった」
「うん?」
「京子ちゃんたちがいてくれて、秋芳君がここまで一緒に来てくれて。ここまで来て、また春虎君の名前が出てくるんだもん。一人だったら耐えられなかったかも」

 倉橋塾長の紹介してくれた名うての陰陽医の名は土御門鷹寛(つちみかどたかひろ)
 春虎の父親だったのだ。

「ああ、同じ土御門の一族でも、まさか父親だとは思わなかったな」
「縁があるのか、ないのか、わからないものね」

 力のない苦笑を浮かべる純。
 春虎にはつい先日フラれたばかりなのだ。

「他にいい人を見つけるといい。…ああいうのがタイプなのか?」
「うん。楽しそうに笑える人が好き。陰陽塾(うち)って、そういうタイプの人あんまりいないから」
「まぁ、基本的にみんな奥ゆかしいからな。大口開けて笑うようなタイプはたしかに少ないかもしれん。つーかルックス的
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