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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
残照 2
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「知るかよ、おれだってわからねぇよ!」
「もうダメだ!」
「こんなとこにいられるか!」
「ちくしょう! ちくしょう!」
「みんなあのバケモノに殺されちまうよ…」
「こんな小さな街、そっくりなくなっちまうんだ」

 工場の中は怒号で満ちていた。

「みなさん、落ち着いてください! あたしは陰陽塾の生徒です。あたしがなんとかします!」
「どうやって? あんな怪物の群れをどうやって倒すんだい?」
「それは……」
 最低限の被害で人々を逃し、街で一番頑丈な建物である工場に籠城することはできた。
 次はどうするか。
 一応、笑狸には本物の大ムカデが出現した時は、秋芳に助けを求めるよう言ってある。
 だが秋芳はいつ助けに来るのか?

(ダメ。秋芳君を頼りにしてはいけない。あたしの、あたしの力でなんとかしなくちゃ。けどあたしの霊力や持てる術じゃあいつらを倒せない。他の方法を、なにか他の方法は……)

「こ、こんな所にいられるか!」

 興奮状態の男が一人、外へ出ようとした。

「お、おいっ、今外へ出るんじゃない! ゲートを開けるなっ」
「うるさい! 死ぬ時は家の畳の上で死ぬ!」
「おい、ケンカしてる場合じゃないだろ!」

 今にも殴り合いが始まりそうだ。
 人々を避難させることはできたが、このままでは――。

「やめて!」

 かなえだ。
「みんな、くやしくないの!? 年に一度のお祭りを台無しにされて、街を好き勝手されて、くやしくないの?」
「そ、そりゃ、くやしいさ! でもよ…」
「京子ちゃん、みんなために戦ってくれた。あたし見たよ。ここに来る前、あんたがムカデに追いつかれそうになった時に凄い量の水をブシャーって出して、追っ払ってくれたでしょ?」
「あ、ああ…」
「ここに入る時に時間稼ぎしてくれたのは誰? 京子ちゃんだよ。自分だってボロボロなのに、式神使って食い止めてくれた。他所から来た人が一生懸命戦ってくれてるのに、みんなはただ騒ぐだけなの? あたしたちが戦わないでどうするの? ここ、あたしたちの街だよ。好きなんでしょ。この前の寄合でみんな言ってたでしょ。みんながどんどん出て行っても、残って立派な街にしようって。あたし好きだよ。川が好き、空が好き、山が好き。金矢祭りも大好き。なにもない所だけど、あたしはこの街が好きなのっ! だから……」

 シンと静まりかえる。
 そして――。

「……女や子ども。年寄りを奥へ移せ」
「おうっ、男はみんな武器を取れ」
「なにか武器になりそうな物は…」
「やってやる!」
「おれらがやんねぇでどうするっ!」

 場の空気が変わった。 

「みんな……」
「かなえちゃん、ありがとう」
「ううん、お礼を言うのはこっち」
「あー、こっちは、
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