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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
残照 1
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、のたうつ老人に無数のムカデが群がるのが見えた。
半被を着た肉の塊。あれはついさっき通りがかる時に言葉を交わした少年――。
大ムカデの放つ異臭と人々の流した血の臭いが鼻をつく。
人が、目の前で死んでいる。
食い殺されている。
「うぐぅっ」
うずくまり胃の中の物を吐きだす。
(なんなの!? いったいなにが起きてるのっ?)
助けなければ。
戦わなければ。
自分は陰陽塾の生徒だ。無力な人々を霊災から守らなくては――。
しかし――。
「いやっ、もういや! だれか助けて!」
涙が止まらない。
腰から下に力が入らず、へたりこむ。
自分を支える力が砕け散った。勇気など湧いてこない。完全に戦意を喪失した。
自分では敵わない。
自分ではどうしようもない。
自分はもう、負けてしまったのだ。
「助けて、秋芳君……」
一匹の大ムカデが鎌首をもたげ、京子に迫る。
自分に迫る牙をただ見つめ返すだけの京子。
「秋芳君……、お願い、助けて」
(自分は『負けてしまったのだ』だの、自分には『できない』だのと思い込み、決めつけることは、自分で自分に可能性を閉ざす呪をかけているに他ならない。目を覚ませ! 倉橋京子!)
!!っ
声が聞こえた。
賀茂秋芳の声が、聞こえたような気がした。
(呪術者同士の戦いや霊災の修祓に『絶対』だの『百パーセント』だのなんてないんだよ。相手の使う術。瘴気の種類や強さなんてわからないのが普通。まして動的霊災ともなれば見た目も能力も千差万別、千変万化だ)
(ほんの一瞬のおびえやひるみ、弱気が一発逆転、起死回生の致命傷になる。一見した霊力や瘴気の総量が多い少ないなんて気休めにもならない)
(生きるか死ぬか、勝ち負けなんてサドンデスがあたりまえ。それが呪術戦だ)
(だが、それでも『絶対』に勝つ気で挑む! 霊力や手数の多寡で勝敗が決まるのではなく『勝つ』という気概をより強く持った方が勝つんだ)
(俺の好きな映画の一つにアーノルド・シュワルツェネッガー主演の『コナン・ザ・グレート』てのがあるんだが、それにグッとくる科白があってだな『俺たちは二人だけで邪教の者と戦う。命を捨てて立ち向かう。この俺の勇気をほめてくれるならば、力を貸してくれ。もし守ってくれなければ二度と拝まんぞ!』てんだ。逆境にあってなお卑屈にならず堂々としているその姿、実にかっこいい!)
放課後の教室や休み時間に、授業中に穏形しつつ、こっそり語った秋芳の言葉の数々が聞こえてくる。
京子の身から消えかけていた意志が、人々を守りたいと思う気持ちがよみがえる。
(わかった。わかったわ、秋芳君。あたしはあなたに『助けて』なんて言わない。そのか
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