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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
憑獣街 3
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秋芳が狙うのは首。
まず首を潰して呪文を唱えられなくするつもりだ。
火怒呂の首に貫手を入れる。相撲でいう喉輪だが、完全に喉を潰すいきおいで突く。
命中。続けざまに股間を蹴り上げ、前のめりになる火怒呂に対し容赦なく打撃をあびせかける。殴る、殴る、殴る、ひたすら、殴る。
両手で頭と顔を守るようしてうずくまったので、頭部目がけて膝蹴りを叩きこむ。のけ反ってがら空きになった胴に突きと蹴りの応酬。
とかく呪術師というものは、相手も呪術師だと呪術戦になると思いがちだ。
だが競技ではないのだから、呪術師同士が向かい合って、よ〜いドンで呪文詠唱開始。などという決まりなどない。
呪文の詠唱や集中するいとまをあたえず、肉弾戦に持ちこむ。
これが秋芳流の対人呪術戦だ。
武術とは、もっとも実践的な魔術の一つなのだ。
このやり方で今まで何人ものはぐれ陰陽師を血祭りにあげてきた。
相手の接近を防ぐため式神を守りにつけるのがセオリーだが、プロならともかく護法式をはべらすもぐりの陰陽師などめったにいない。
今回の場合、火怒呂は一体しかいない自分の護法式を自分の身の近くから離しすぎた。
秋芳たちを挟み撃ちにすることが裏目に出たのだ。
一方的。あまりにも一方的な秋芳の攻勢だったが、しかし――。
「!?」
異様な殺気を感じて跳びすさる秋芳。
わき腹に痛みが走る。まるで獣にで咬み千切られたかのように肉がえぐられていた。
内臓までは達していない。致命傷ではないものの、血が流れ出し地面に染みを作る。
「やれやれ、乱暴な陰陽師だ。死んでいなかったら死んでたかもなぁ」
火怒呂の体から声が響く。
喉は完全に潰したはず。ではどこから?
「これがわれの新しい力。二つ目の冥途の土産だ」
火怒呂の肩に牙を剥いた犬の頭が生えている。その犬がしゃべっているのだ。
「くっくっく、蠱道に使役されし三十六の禽獣よ、わがもとへ集え。咬み、啄み、啜れ!」
火怒呂の全身から次々と獣の頭が生える。
膝からも肩からも犬や猫。鳥の頭が生えてくる。指は蛇に、つま先は蝦蟇に、背中からも得体の知れないなにかが生えて不気味に蠢いているのがわかる。
だが服はどこも破れていない。肉体そのもが変化しているわけではないようだ。
一つの巨大な霊災を中心として無数の霊災が連鎖的に発生し、無数の霊的存在が実体化して暴れ回る 状態をフェーズ4。百鬼夜行と呼ぶが、今の火怒呂の醜悪かつ邪悪な姿と、身にまとう妖気の量は、まさに歩くフェーズ4状態だ。
「おいおい、一人百鬼夜行かよ。ワンマンアーミーなんて言葉はあるが、ワンマン……そういや百鬼夜行を英語にするとなんて言うんだ? パンデモニウム? う〜ん、ちょとちがうような……」
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