暁 〜小説投稿サイト〜
東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
憑獣街 3
[3/11]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
似合わぬ俊敏さだ。
 全力で倒すつもりで戦って、やっと時間稼ぎになる。
 手持ちの呪符は五行符がそれぞれ数枚。それと桃園霊符がまだ一枚残っている。
 自分の使える術には限りがある。どうする? どうすれば、勝てる?

(さっきの火。相剋相性だったにしても簡単に打ち消せた。この犬、呪力はたいして強く無いんじゃない?)

 ふとある考えが脳裏に浮かぶ。

「GAUUUッ!」
 黒楓の薙刀が禍斗の前脚を掃う。
 転倒こそしないもののバランスがくずれ、隙が生じた。

(今よ!)

 一瞬だけ意識を白桜・黒楓の制御から離し、自前の呪力を練り上げるのに集中。
 転法輪印を結印し、続いて呪縛印に。

「緤(す)べて緤べよ、ひっしと緤べよ、不動明王の正末の本誓願をもってし、この邪霊悪霊を搦めとれとの大誓願なり! オン・ビシビシ・カラカラ・シバリ・ソワカ!」
 
 不動金縛りの術。
 目に見えない呪力の縄が禍斗の身を縛る。
 成功だ。

「今よ! 白桜、黒楓!」

 反撃の心配はない。二体の式神に守りを捨てた全力攻撃を命じる。
 刀を何度も打ち据える白桜。
 渾身の力で薙刀を叩きこむ黒楓。
 禍斗の体にラグが走る。
 効いている。
 確実にダメージを与えている。
 だが。

「GUGAGAAAッ!」

 京子の呪縛を力任せに引きちぎり、突進。
 二体の式神が大きく吹き飛び、こんどはこちらがラグる。

「きゃあっ」

 術を返された衝撃に、つい悲鳴があがる。

(こいつ、なんてタフなの!?)

 思わず後退し、相手と距離を取る京子。

(こわがっちゃダメ。戦うのよ…)

 とんっ。
 ふと背中になにかがあたり、そこから温かい気を感じる。
 彼だ。
 秋芳の背中だ。
 怖じ気が消え、自然に安堵の息が漏れる。

「もう一分は経ってると思うけど、手こずってる?」
「少しね。あいつ変身しやがった」

 たしかに。最初の比ではない邪気が向こうからひしひしと伝わってくる。正直それにくらべれば、あの漆黒の魔犬。禍斗なんてかわいいものだ。

「……ヤバイ気がびんびん伝わってくる。あんなの一瞬でも見たくないわ、早く倒して」 
「おう」
 
 ほんのわずかな背中合わせの会話。
 たったそれだけのことで京子は体力も霊力も全快したような気分になった。
 彼と一緒に戦っている。負けるわけがない。
 彼の背中を守っている。負けるわけにはいかない。
 勝つ。
 絶対に、勝つ。

「白桜、黒楓!」

 京子の右前方に白桜が、左前方に黒楓が移動する。
 だがかなり離れた配置だ。この布陣では京子の前がガラ空きだ。

「GUUUU……」

 獣の瞳に思案の色が見える
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ