暁 〜小説投稿サイト〜
東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
憑獣街 3
[2/11]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話

 軽口を叩きつつ、異形と化した火怒呂の姿をしっかりと視る。
 五行の偏向は見られない。しいて言えば呪詛の塊だ。
 下手に接近すれば獣たちの牙の餌食になる。となれば――。

「我咆哮、金城穿孔、鉄壁崩壊。吼っ!」
 我が咆哮は金城を穿ち、鉄壁を崩す。
 虎の口を模して重ねられた掌から気がほとばしる。
 純然たる気の衝撃、虎吼掌波だ。
 鬼の体をバラバラに吹き飛ばしたこともあるその苛烈な一撃は、はずれることなく火怒呂を撃つ。

「ぐっ、やるな。今のは発剄か?」

 衝撃を受けて数歩後ずさる。その時ジャミングされた映像のように火怒呂の輪郭がぶれ、明滅した。
 これはrag。
 ラグと呼ばれる現象だ。
 式神や霊災のような霊的存在は物理的影響力を持つ立体映像のようなもので、そこにあるように見えても実際にそこに物質があるわけではない。
 そのため物理的・霊的に強い干渉を受けると構成が乱れてラグが出る
 火怒呂六三。もはや人ではない証左だ。
 しかし与えたダメージは低い。
 シャァァァッ!
 火怒呂の背中から鞭のようなものがしなり、秋芳の首を狙う。同時に指の毒蛇が胴を、つま先の蝦蟇が長い舌を足に絡ませようとのばす。
 残りの桃園霊符に気を廻らせて鞭を断ち斬りつつ、軽功を駆使して攻撃を避ける。
 避ける、避ける、避ける。

「ええいっ、ちょこまかと!」

 毒蛇の牙も蝦蟇の舌も、秋芳の身にかすりもしない。
 地面に落ちた鞭らしきものが、しゅうしゅうと音を立てて消滅する。
 それは巨大な蠍の尻尾だった。

(ひー、おっかねぇ。どんな毒があるか知れたもんじゃない)
 
 とんっ。
 ふと背中になにかがあたり、そこから温かい気を感じる。
 京子だ。
 京子の背中だ。

「もう一分は経ってると思うけど、手こずってる?」
「少しね。あいつ変身しやがった」
「…ヤバイ気がびんびん伝わってくる。あんなの一瞬でも見たくないわ、早く倒して」 
「おう」

 ほんのわずかな背中合わせの会話。 
 こんな時だというのに、それが妙に楽しい。秋芳の顔に自然に笑みが浮かぶ。


 


 京子の戦いは禍斗の先制攻撃から幕を開けた。

「GAFOLAAAッ」
 漆黒の魔犬の口から炎の息が吹き出す。

急急如律令(オーダー)!」

 即座に水行符を発動させる。水剋火。水は火を消し止める。
 灼熱の息吹は京子になんの影響も与えなかった。
『倒そうなんて考えるな』
 彼はそう言った。けれども目の前の動的霊災は時間稼ぎを念頭においた戦い方でしのげる相手ではない。
 現に白桜と黒楓の連携攻撃を軽やかに避けつつ鉤爪や牙で反撃し、少ないながら、こちらの式に手傷を負わせている。
 その巨体に
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ