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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
憑獣街 2
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おいで京子を抱いて跳び伏す。左半身に衝撃が走る。

「ちょっと! いきなりなに――ッ!?」

 急に押し倒されたと思った広義の声をあげようとして絶句する。
 秋芳の左上腕部がごっそりと食いちぎられ、皮一枚だけでかろうじて下の腕とつながっていた。
 くちゃ、くちゃ、くちゃ……。
 なにかを咀嚼する音が聞こえる。
 見れば仔牛ほどのサイズをした黒い大型犬が(あぎと)を地に染め、なにかを食べている。
 食べているのは彼の腕だ。
 あれに襲われたのを彼が身を挺してかばってくれたのだ。
 自分のミスで彼が大ケガを負ったのだ。
 そう京子の頭が理解すると同時に、激しい自責の念とともに涙があふれ出た。

「ご、ごめんなさい! ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい――」

 負傷箇所から白い骨が露出して見える。それをおおう赤い肉。内圧で筋繊維が押し出されると同時に鮮血が吹き出し京子の身が真っ赤に染まる。

「…やれやれ『足手まといにだけはならない』じゃなかったのか? 油断して不意を突かれるなんて、なってないぞ」

 出血と同時に激痛が走る。
 流血と共に力も抜けていく感覚。意識が遠のくが、激しい痛みがそれをゆるさない。
 苦痛をこらえ、ゆっくりと立ち上がる。

「これは大きな貸しだぜ、倉橋京子。そのでかい胸を揉みくちゃにするだけじゃ返しきれん。髪の先から足のつま先まで、身体で払ってもらおう」

 ついついエロ魔人の本性が出てしまう秋芳だった。

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい! なんでもするから、ゆるして、死なないで、お願い……」

 軽いパニック状態になり涙ながらに謝罪の言葉をくり返す京子の姿に、秋芳の庇護欲と
 嗜虐心が刺激される。
 と同時に胸に込み上げてくるものがあった。
 なつかしさだ。
 先日の放課後。京子と簡易式を使って戯れていた時にも感じた違和感をともなう、もの
 なつかしさ。
 ずっと昔。こんなふうに泣きじゃくる京子の姿を見たおぼえが――。

(――あるわけがない。まったく、こんな時に、なんなんだ。ええい!)

 雑念をふり払い、傷口を確認して口訣を唱える。

「禁傷則不能害」

 傷を禁ずればすなわち害することあたわず。
 たちまち傷が癒え、出血も止まる。
 いや、最初からケガなどしていなかったかのように、破れた服の布地はそのまま。筋肉質の腕だけがそこにあった。

「え? な、なに。それ……」
「俺はこのとおりだいじょうぶだ。押し倒して悪かったな、立てるか?」
「う、うん。あたしは平気」

 右手で京子を抱き起す。左腕は、使えない。
 傷をふさいでも失った血液と体力まではすぐには回復できない。しばらく左の腕は萎え
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