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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
憑獣街 2
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。長い間もぐりの陰陽師をしていた秋芳は、その名に聞き覚えがあった。

(たしか獣の霊を使役する術を心得た憑依師だったはずだが、妙だな。少し前に呪捜部の連中に『処理』されたと聞くが……)
「しかし、犬神とはね……」

 餓えた犬の首を切り落とし、それを道に埋めて人々が頭上を往来することで怨念の増した犬の霊を式神として使う方法。
 あるいは犬の頭部のみを出して生き埋めにしたり、壁や柱につないで、その前に食物を見せて置き、餓死直前に首を切ると、切られた頭が飛んで食物に食いつき、これを焼いて骨にした物を呪具にしたりもする。
 犬に限らず獰猛な数匹の獣を戦わせて、勝ち残った一匹を生け贄にしたりと、時代や土地によって様々なバリエーションが存在する。
 だがいずれも触媒となる生き物を徹底的に苦しませた末に殺し、その怨念を利用するという方法は変わらない。
 忌まわしい外道外法の邪術だ。

「犬神という式神に憑かれると無気力。あるいはその逆に粗暴な性格になり、犬神使い。犬神筋や憑き物筋と呼ばれる術者に操られると聞くが」
「そうよ。さらに憑依した人間の目を通して犬神使いはものを見ることもできるの」
「ずいぶん便利ね。あ、じゃあさっきの連中って」
「ええ、そう。でも彼らは一時的に憑依されたくちだから祓魔の術で呪詛を、犬神を散らせるわ。けれどもあんまり長い時間憑依され続けると、本人の魂と融合して、それもむずかしくなる…」
「そんな、大変じゃないですか! もし街中にあんなのがあふれたら…」
「だから犬神を、すべての犬神を送り返すの」
 
 呪詛返し。
 相手がかけてきた術を破り、その術を術者本人に送り返すことを言う。
 呪詛とは怒りや悲しみ、恨みや憎しみといった他人の負の霊力を呪力に変換したものであり、呪力の制御を破れば、解き放たれた呪力はみずからを利用した術者に向かい、その力をむける。
 生き物の怨念を使った蠱毒などは、この呪詛返しがもっとも効果的に働くとされる。

「送り返すと言うが、どうやって? 憑き物を完全に落とすにはそれなりの手順が必要だし、あれだけの数の……。その包み。ひょっとして中身は」
「ええ、蠱毒の本体。四つに分けられた犬の頭蓋骨の一部よ」

 思わず息をのむ京子。
 まさかそんなおぞましい物を抱えていたとは……。

「あいつはこれと同じ物を陰陽塾の周りに埋めることで犬神の数を増やすと同時に、陰陽塾そのものを呪詛するつもりなの」
「陰陽塾を呪詛するですって? そんなの無理に決まってるわ! 陰陽塾の結界は完璧よ。知る人の限られた古いタイプの結界から最新の結界まで、二重三重に守られてるし、プロの陰陽師だって何人も控えてる。こと呪術面に関してはうちよりも安全な場所なんて都内に、ううん。日本中にだって数えるくらいし
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